世界史から学ぶ国際情勢(第24回)

なぜスイスは永世中立国でいられるのか?

2015.11.20 Fri連載バックナンバー

 永世中立国にどのようなイメージをお持ちだろうか?

 一般的には反戦・非武装といったイメージで捉えられることが多く、しばしば日本の永世中立化なども議論にあがる。しかし歴史上、スイスは戦争を繰り返してきたし、傭兵を送り出したり戦費を預かったりと、戦争に参加することで国を維持してきた。

 今回はスイスの歴史を通して永世中立について考えてみたい。

 

永世中立国にはどのような国があるのか?

 どの国が永世中立国であるかという点についてはどこかに規定があるわけではないので、種々の議論がある。しばしば名前が挙がる国には以下があり、この他にモルドバ、カンボジア、コスタリカ、リヒテンシュタインなどが中立を宣言している。

・スイス:1815年のウィーン会議で関係国が承認
・オーストリア:1955年の中立宣言を周辺国が承認
・トルクメニスタン:1995年の国連総会で承認

 オーストリアは第二次大戦後に米ソの侵攻を受け、永世中立やドイツとの分離を条件に独立が認められた。独裁国トルクメニスタンはもともとソ連の一部で、ロシアの安全保障体制を拒否する代わりに、アメリカ側にも近隣のイスラム諸国にもつかない永世中立を宣言して国連で認められた。

 両国の永世中立はいかなる陣営にも属さないことを条件に認められたわけだが、この「非同盟」が中立の重要な条件となっている。たとえば非武装中立を宣言したコスタリカはアメリカ主導の安全保障体制下にあるリオ条約や米州機構に参加しているため、中立であるか否かについて議論がある。

 陣営に属さないということは、誰も守ってくれないということでもある。このため中立は非武装ではなく、自国あるいは周辺国のためにむしろ武装して積極的に守らなければならないと考えられることが多い。実際、上の3か国はいずれも武装している。

 そして永世中立の定義が定まっていない以上、もっとも重要なのは国際社会の認知・承認ということになる。その信頼が永世中立国としての政治力や抑止力につながっていくわけだが、こうした意味では、本当に永世中立を実現したのはスイスだけと言えるかもしれない。

 スイスは長い戦争の果てにこの信頼を勝ち取った。次章以降でその歴史を追ってみよう。

 

スイスの歴史 1. 無敵のスイス同盟軍

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長谷川 大

長谷川 大

世界遺産&旅行ライター

横浜国立大学卒業後、出版社勤務。三国志・戦国時代・幕末・ギリシア神話など、歴史ものを中心に編集・ライティングを行う。世界一周の旅を経てフリーの編集者・ライターとして活動中。これまでの訪問国数は68か国、世界遺産は182か所。All About「世界遺産」公式ガイド。http://allabout.co.jp/gm/gt/563/

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