世界史から学ぶ国際情勢(第15回)

なぜ世界でパンデミックが増えているのか?

2015.07.02 Thu連載バックナンバー

 韓国で流行中のMERS(中東呼吸器症候群)や中国南部で流行を繰り返す鳥インフルエンザ、昨年東京代々木で確認されたデング熱……

 ここ数年、熱帯地方の風土病で日本には縁がないと思われていた感染症が新聞紙上をにぎわすことが多くなった。しかも単に海外で流行しているにとどまらず、いつ日本で流行してもおかしくないという論調だ。

 たとえばエボラ出血熱について、アフリカではこれまでも数年に一度の流行を繰り返してきた。ところが2014年の大流行の際にはリベリア帰りの日本人の感染・発症が疑われ、日本での流行さえ懸念された。

 日本でこうした病気のリスクが増しているのだろうか? 今回はその実態と原因を探ってみたい。

 

MERSに見るウイルスの特徴

 2012年9月、サウジアラビアの病院で急性肺炎によって死亡した患者から未知のウイルスが発見された。MERSコロナウイルスだ。

 そもそもウイルスは細菌とまったく異なるものだ。細菌は単細胞生物で、分裂することで増え、生物の体内のみならず海・川・土などあらゆる場所に存在する。

 これに対してウイルスは細胞を持たず、生物の細胞の中に入ってその細胞に自分の遺伝子を作らせて増殖する。そのため非常に小さく、細菌の数十分の一~数百分の一にすぎず、生物なのか無生物なのかも厳密には定義されていない。

 他の生物の細胞に依存しているため、その生物が死ぬと増殖は止まり、乾燥したり体液の外に出ると感染力を失ってしまう(つまり、死ぬ)。ウイルスが存在しつづけるためには、ウイルスに寄生されても害なく生きる生物=自然宿主がいなくてはならないのだ。

 MERSコロナウイルスの自然宿主はコウモリで、コウモリからラクダ、ラクダから人に感染したと考えられている。人への感染経路としては、ラクダの乳や体液からの感染が疑われている。MERSに治療法は存在せず、中東ではこれまで1,000人以上の感染例があり、致死率は40%に及ぶ。

 そして2015年、ひとりの男性によってウイルスは韓国に運ばれた。中東数か国を訪れたこの男性は韓国で熱を出すが、病院を回っても原因は不明。4軒目の病院でMERSの陽性が確認されて隔離されたが、発症してから10日が経っていた。

 MERSは咳やクシャミといった体液の粒子から感染するため(飛沫感染)、男性の身近にいた家族・病院関係者・同室の患者にうつり、二次感染・三次感染へと拡大した。そして6月30日現在で感染者182人、死者33人を数えている。

 

デング熱に見る流行地の拡大

 2014年8月、東京都と埼玉県に住む20代の若者3人がデング熱を発症した。… 続きを読む

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長谷川 大

長谷川 大

世界遺産&旅行ライター

横浜国立大学卒業後、出版社勤務。三国志・戦国時代・幕末・ギリシア神話など、歴史ものを中心に編集・ライティングを行う。世界一周の旅を経てフリーの編集者・ライターとして活動中。これまでの訪問国数は68か国、世界遺産は182か所。All About「世界遺産」公式ガイド。http://allabout.co.jp/gm/gt/563/

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