世界史から学ぶ国際情勢(第12回)

なぜアメリカはキューバに歩み寄ったのか?

2015.05.25 Mon連載バックナンバー

 2015年3月、アメリカのオバマ大統領はキューバに対するテロ支援国家指定の解除方針を示し、4月11日にラウル・カストロ議長と首脳会談を開催した。両国トップが会談を行うのは1956年以来のことで、国交断絶以降はじめてとなる。

 キューバは中南米における反米勢力の急先鋒だ。アメリカは国交断絶後に貿易封鎖を行ってキューバの孤立化を図ったが、逆に南米ではコロンビアを除いて親米政権がなくなり、むしろアメリカこそ孤立したように見える。

 そもそも中南米を支配していたのはスペインとポルトガルだ。それがどうして反米なのか? 今回は反米の理由と、アメリカが歩み寄りはじめた訳を考えてみたい。

 

中南米諸国のスペインからの独立

 1492年にコロンブスがカリブ海に到達してから、中南米の多くはスペインとポルトガルが支配した。アステカ、インカなどを滅ぼして黄金を収奪し、その後は鉱山やプランテーションを経営して先住民を強制労働させた。伝染病や徴用・虐殺により数千万の先住民が死亡したとされ、労働力が減るとアフリカから黒人奴隷を輸入して補った。

 中南米で独立の動きが活発化するのは18世紀後半だ。1776年にアメリカが独立宣言を行い、イギリスとの間に独立戦争が起こる。アメリカが勝利すると、中南米で生まれ育った現地在住の白人=クリオーリョを中心に独立の機運が高まった。

 1789年にはフランス革命が勃発して絶対的な存在だった国王が斬首されると、自由と民主主義を求める運動はさらに拡大。スペインがナポレオンに支配されたのを機に、メキシコなどで独立運動が具体化した。

 その勢いで1804年にハイチが独立。これを皮切りに、1820年代までにパラグアイ、アルゼンチン、チリ、大コロンビア、ペルー、メキシコ、ブラジル、ウルグアイといった国々が独立し、1830年代には大コロンビアが分裂してコロンビア、ベネズエラ、エクアドルが誕生した。

 スペインなどが介入を画策するが、アメリカはヨーロッパとその植民地に干渉しない代わりに、ヨーロッパ諸国に南北アメリカ大陸への不干渉を求め(モンロー教書)、これにイギリスが同調した。

 

直接支配から資本による支配へ

 イギリスはこの時代、すでに産業革命を成功させて自由貿易を推進しており、植民地経営も大きく変わりつつあった。たとえば奴隷制の廃止だ。

 1833年の奴隷制度廃止法で奴隷制を廃止したが、そもそも奴隷をアフリカで買って別の大陸で売るという商売はコストもリスクも高い。そのうえプランテーションを建設・運営して奴隷を生涯面倒みなければならないし、反乱や暴動のリスクがあり、労働意欲に薄いので熟練工なども生まれない。

 それに対して産業革命期の工場では、… 続きを読む

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長谷川 大

長谷川 大

世界遺産&旅行ライター

横浜国立大学卒業後、出版社勤務。三国志・戦国時代・幕末・ギリシア神話など、歴史ものを中心に編集・ライティングを行う。世界一周の旅を経てフリーの編集者・ライターとして活動中。これまでの訪問国数は68か国、世界遺産は182か所。All About「世界遺産」公式ガイド。http://allabout.co.jp/gm/gt/563/

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