ITトピックス(第2回)

人気作家が参入、電子出版の新しい動き

2014.09.27 Sat連載バックナンバー

 2013年に書籍と雑誌をあわせて1,000億円市場に達した電子出版市場。携帯電話からスマートフォンへと持ち歩く端末の種類が変わり、電子書籍を閲覧しやすい環境が整ってきたことも、市場の拡大に拍車をかけた。

 機は熟したと見て、この夏には芥川賞作家の池澤夏樹さんが、自作の電子書籍版を提供するサイトを立ち上げ、漫画家の赤松健さんも、以前から手掛けていた絶版マンガを電子化するサービスの拡充に乗り出した。アマゾンが提供する電子出版サービスから、文学賞にノミネートされる作家も登場する時代。動きがあるたびに“元年”と言われ続けて来た電子出版が、いよいよ本格化し始めた。

 

大手出版社に感じられなかった熱意

 今年の7月2日、東京国際ブックフェアと併せて開かれていた国際電子出版EXPOの会場で、『スティル・ライフ』で芥川賞を受賞した作家の池澤夏樹さんが講演を行った。電子出版を20年近く続けてきたボイジャーと協力して、「カフェインパラ」という電子書籍を提供するサイトを前日にスタートさせた池澤さん。それまで頑なに電子書籍化を拒んできた作家がどうして決断を覆したのかが、「カフェインパラ」の発表会見や、電子出版EXPOの会場で語られた。

 『スティル・ライフ』以外にも、谷崎潤一郎賞を受賞した『マシアス・ギリの失脚』など数多くの小説作品を執筆し、エッセイなども出している池澤さんだけに、これまでも電子書籍化の働きかけは各社からあった。それを受けなかったのは「言い方が難しいけど、熱心にそれをやる気があるのかと不安だった。とりあえず抑えておこう、この先どうなるか分からないけれど、つばを付けておこうというくらいの熱意しか感じられなかった」から。出版社側にも、パソコンや携帯電話、スマートフォンと変化の激しい閲覧環境に合わせてどう読ませるか、どう売るかといった問題を試行錯誤してきた事情はあるが、書き手がそれにあわせて右往左往するのは違う、といった考えもあったようだ。

 また、書き手にとって重要な印税率も、電子書籍ではこれといった形がなかなか定まらなかった。「コストがかかるからとか、今は売れないからというのが印税率に反映するなら、時期が熟すまで待つのが僕の姿勢」。そう考え、多くの誘いを断ってきた池澤さんだったが、今回、ボイジャーからの提案に「コストも印税率も含め納得がいった」ため、応じることにしたという。ボイジャーとは以前にも、ネット上でメールコラムを連載し、電子書籍化して関係があったが、今回は「友情ではなくビジネスとして」仕事を預けたという。… 続きを読む

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産経デジタル

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産経新聞グループ各媒体のウェブサイト運営、ポータルサイト・モバイル端末などへのニュースコンテンツなどの配信を手がけています。ウェブでも国内最大級のニュースサイト「MSN産経ニュース」などを運営する産経新聞グループの記者が「Bizコンパス」のために書き下ろした、ここでしか読めない記事です。

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