「伝える力」を養えば、「ビジネス力」が身につく(第1回)

池上彰も昔はわかりやすく説明できなかった

2017.07.04 Tue連載バックナンバー

 「池上彰のニュースそうだったのか!!」(テレビ朝日系)や「池上彰スペシャル」(フジテレビ系)など、数々の報道番組に出演する人気のジャーナリストといえば、池上彰氏です。先日の東京都議会選でも、テレビ東京系で放映された特番が話題となりました。

 難解な政治問題や国際情勢を、わかりやすく流暢に説明する姿が印象的な池上氏ですが、初めからそれができたわけではありません。アナウンサー時代は「わかりやすく伝える」ということがどういうことなのかが理解できず、苦労をしたといいます。そして現在は、物事を伝える際には、意図的にわかりやすくなるようにしているといいます。

 池上氏が意識している「伝える力」「わかりやすさ」とは一体何なのでしょうか。彼の著書「伝える力」(PHP研究所刊)から読み解きます。

 

「ハッケンギンコウ」を子供にどう説明するのか?

 池上氏はNHKのアナウンサーだった1994年から2004年までは、10年間に渡って、子供のための報道番組「週刊こどもニュース」のお父さん役を務めていました。

 その中で池上氏は、子供たちにニュースをわかりやすく伝えることに、苦労があったとしています。

「日銀は発券銀行でね…」
「ハッケンギンコウって何ですか?何をハッケン(発見)するの?」
「お札を発行する銀行なんだよ」
「エーッ? お札を発行するって、私たちにお金をくれるの?」
「日銀は市中にお金を供給しているんだよ」
「シチュウって何?キョウキュウするってどういうこと?」
(第1章1項より抜粋)

 子供たちからこうした質問を矢継ぎ早に受けた池上氏は、「自分は日銀について、本当にわかっているんだろうか。いや、何もわかっていないんじゃないか」ということに気付かされたといいます。

 また、ある日、知り合いのアナウンサーが放送中にニュース原稿を読んでいるのを何気なく聞いていると、ある一部分から、突然その内容が頭に入ってこなくなったそうです。放送終了後に「今の放送で、意味がわからないまま読んだところ、なかった?」と聞くと、そのアナウンサーはまさに池上氏が頭に入ってこなかった部分を指摘したといいます。

 池上氏はこのとき、意味がわからないまま読んだり話したりすると、それを聞いている相手も意味がわからない、ということに気付いたといいます。

 池上氏の“伝える力”の本質は、まずは自分自身が“理解したつもり”ではなく、“物事を深く理解すること”といえそうです。

 

逮捕状を発行するのは警察ではない

 ビジネスパーソンが相手に何かを伝えたいとき、最も大きな障害となるのが“理解したつもり”です。前述の経験談の通り、たとえ原稿に書いてある内容をそのまま読んだとしても、読んでいる本人がその内容を深く理解していなければ、相手には伝わりません。

 では、どの程度物事を理解すれば深く理解したことになるのか、その具体例を、池上氏は本書で、ニュースで頻出するある言葉を例に示しています。

 ニュースでしばしば「逮捕」という言葉が登場します。警察が逮捕を行うためには、 「逮捕状」が必要となりますが、この逮捕状は誰が出すものなのか、知っている人は少ないでしょう。もしかすると、「警察」と答える人が多いかもしれません。

 正解は… 続きを読む

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高田 樫央

高田 樫央

フリーライター

製造業を中心に通訳・翻訳業に従事した後、フリーライターに転身。IT・セキュリティソリューション関連情報を中心に執筆。Webマーケティングに精通している。

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