相手の「No」を「Yes」に変える(第3回)

消極的すぎる部下は「学習性無力感」かもしれない

2017.08.04 Fri連載バックナンバー

 言われたことはやるけれど、意識が低くて消極的な部下には困ってしまうものです。けれども、その部下の態度を見て、頭ごなしに「やる気がない」と叱ってはいけません。

 なぜなら、部下の消極性は「学習性無力感」によるものかもしれないためです。もし、実際にそうだった場合は、無理矢理励ましたり鼓舞するのではなく、心理学に基づいた適切な方法を用いることで、部下は自信を持ち、現状を打破するように自ら働くでしょう。

 そのための方法には、「スモールステップ法」と「ソーシャルサポートの強化」の2つがあります。今回はこの2つの方法について、詳しく紹介します。

 

やる気のない部下 もしかしたら「学習性無力感」?

 指示をすれば行動に移すものの、自分からは進んで動く気配がなく、覇気が感じられない……そんな部下は、上司の頭を悩ませる存在です。このような場合、部下に対して上司が一方的に積極的になるように促したり、意欲を引き出そうとするケースは少なくありません。しかし、効果があったとしてもそれは一過性で、すぐに元の状態に戻ってしまいがちです。

 自主性が低く消極的な部下は、過去の何らかのできごとから、「学習性無力感」に陥っている可能性があります。学習性無力感とは、努力をしても期待した成果が一向に得られないことで「頑張っても意味がない」とネガティブになり、無気力になることを指します。

 ビジネスシーンでいえば、仕事で精を出したのに上司から正当な評価を得られない、上司に提案しても年功序列を理由に聞き入れられない、残業したけど結果が出ない、といったことで起こりがちです。学習性無力感を感じるようになると、頑張ることや努力することの意味を見出せず、指示された最小限のことしかせず、無難に収まることをよしとします。

 こうした学習性無力感に苛まれている部下を変えるための、心理学に基づいた2つのアプローチ方法を紹介します。

 

小さな成功体験で部下のやる気を取り戻すスモールステップ法

 1つ目はスモールステップ法です。大きな目標を立てるのではなく、小さな目標を達成していくことで自信をつける方法です。

 過去の経験から自信を喪失し、やる気を損なっている部下には、成功経験を自ら積むことが、意欲を高めるきっかけとなります。この場合の「成功」とは、ビジネス上の業績アップだけではありません。自分の意見を上司に提案し、受け入れられることも、成功体験のひとつとなります。

 スモールステップ法では、ゴールまでの道筋を立て、それを5~10程度に細分化し、1つずつ成果を上げていきます。小さな目標を達成し、成果を上げることが、自信につながります。

 部下が自ら考えて動くようにするためには、部下に意見を求める際、その意見を受け止めて、上司自身がジャッジしないことがポイントです。意見を出してくれた部下に対し、プラスの評価を与え、その意見をサポートすることが、自主性を高めるために有効です。

 これを繰り返すことで、部下も自らの意見を言えるようになり、主体性や積極性を取り戻しやすくなります。

 

自信を取り戻すきっかけになる「ソーシャルサポート」

 もう1つの有効な方法は、ソーシャルサポート(SS)の活用です。SSとは周囲からの援助のことを指します。

 ビジネスシーンにおいて活用可能なSSとしては、以下の3つあります。1つ目が「道具的サポート」で、困難時に問題解決に役立つツールや道具を、周囲から貸してもらったり、直接手伝ってもらうものです。2つ目が「情報的サポート」で、問題解決に役立つプラスの情報を、周囲から教えてもらいます。3つ目が「情緒的サポート」で、不安な気持ちになった際に、誰かに寄り添ってもらったり、相談に乗ってもらいます。

 自信喪失して自主性が見られない時は、人に対して劣等感を抱き、周囲の協力を仰ぎにくい状況にあります。ですが、一人では成し遂げにくいことも、周囲の力を借りれば大きく状況が動くことがあります。

 そのことを踏まえて、上司として3つのサポート方法を理解し、自信を取り戻せるように相談に乗ったり、他の部下にサポートしてもらって仕事の納期を大幅に短縮するなど、部下自身が目標を達成し、成功経験を積む工夫が必要です。

 やる気がなく消極的で指示待ち人間に見える部下は、本当にやる気がないのではなく、何らかの理由で、一時的にそうなってしまっているだけの可能性が高いです。部下が失った自信を取り戻せるよう、本記事で紹介したスモールステップ法やソーシャルサポートを活用してみてください。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2017年7月25日)のものです。

田倉 怜美

田倉 怜美

Well-being代表、心理カウンセラー

いじめ、セクハラ、パワハラの三重苦を経験し、保健室登校生のサポート経験から2005年よりカウンセラーを志す。2012年にカウンセラーデビュー。心理学講師、ライターと活躍の幅を広め、2016年に独立。川崎FMラジオ、TBSテレビ「好きか嫌いか言う時間」に出演。2017年夏に心理本の出版を控えている。主な資格:日本心理学会「認定心理士」、日本健康心理学会「認定健康心理士」他

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