リーダーが「孤独」であるべき理由(前編)

探検家・ナンセンが北極で下した「孤独な決断」

2017.03.17 Fri連載バックナンバー

 ビジネスを成功に導くためには、仲間と団結、協力することが欠かせない。しかし、「仲間」や「団結」という言葉を強調し過ぎると、ただの「馴れ合い」集団になってしまう危険性がある。似たような考えの仲間だけが集まり、お互いに肯定しあうだけの環境であれば、組織は外部の知識や新しい発想を取り入れたりしなくなるだろう。

 それを防ぎながら「自立した」部下を育てるためには、リーダーは組織の輪から一歩離れたところで「孤独」という客観性を保つことも手段のひとつである。

 孤独なリーダーを貫いた人物のひとりに、ノルウェーの極地探検家、フリチョフ・ナンセンという人物がいる。彼は組織を成功に導くために、過酷な状況でさまざまな決断を下した。

 本記事では、ナンセンの著書「極北」(上下巻・福音館書店 刊・沢田洋太郎 訳)から、リーダーが「孤独」であることの必要性を見ていく。

 

今もノルウェーで受け継がれる遺志

 フリチョフ・ナンセンは、極地探検の歴史に名を遺したノルウェーの探検家のひとりだ。1893~1896年まで北極点遠征(フラム号遠征)を実行して、当時の最高到達点を記録した。周到な計画と準備、そして困難を打開する力を持ち合わせたリーダーとして、今に伝えられている人物である。

 動物研究家の一面も持つなど、その活躍は非常に多方面に及び、晩年には政治家としても活動をしていた。第一次世界大戦後には国際連盟の初代難民高等弁務官を務め、ノーベル平和賞を受賞。ナンセンの名を冠した機関・施設は数多く、ノルウェーでは今も彼の遺志が受け継がれている。安倍総理も、海外のスピーチにてナンセンを話題に出すほどだ(2016年9月3日 東方経済フォーラム全体会合)。

 

無闇な「冒険」はしない、用意周到な探検家

 ナンセンが11人の乗組員と共に、探検船「フラム号」で北極遠征に旅立ったのは1893年のこと。未知の北極海域の調査のため、ノルウェー政府の支援を受けたものだった。

 航海プランは、船が流氷に閉じ込められたら、海流に乗って北極点を目指すというものだった。しかし航海の途中で、このやり方では北極海の横断はできても、北極点に辿り着くことはできないことがわかってきた。そこで彼は途中で船を降り、ソリを用いた探検に切り替えることを考えた。

 それを察したひとりの乗組員が、自分を連れて行ってほしい、と願い出た。ナンセンは「命がけのことになる」と彼を諭した。

 しかし、その乗組員はこう言ったという。… 続きを読む

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高島 ちなみ

高島 ちなみ

フリーライター

2012年より執筆活動を開始し、ビジネスコラム・グルメレポートなどを執筆。無類の図書館好き。趣味が高じて司書資格も取得。ライブラリアン・検索技術者として、WEB媒体向けのレファレンス支援も行う。

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