短時間労働の国・スウェーデンに学ぶ生産性向上術(第3回)

スウェーデンでは「残業する人=仕事ができない人」

2017.04.10 Mon連載バックナンバー

 日本では2月から、毎月末金曜日は午後3時退社を推奨するプレミアムフライデーという制度が始まり、いよいよ働き方改革が本格的に動き出しました。安倍政権による働き方改革の目玉は、「残業を削減し、短時間労働を実現すること」です。厚生労働省ではそのモデルケースとして、スウェーデンを参考(PDF)にしています。

 スウェーデンの一般的な勤務スタイルは、朝9時に出社して午後5時に退社するという8時間労働です。週平均労働時間は36時間であり、重大なトラブルが起こらない限りは残業をすることはありません。

 定時の退社時刻は午後5時ですが、その日の仕事が早く終われば、定時を気にすることなくさっさと帰宅します。普段は午後5時に退社しますが、週に1〜2回は仕事を早く切り上げて午後4時ごろに退社します。そのため、オフィス街の帰宅ラッシュは午後4時ごろに始まります。

 では、どうしてスウェーデン人は5時までに退社することができるのでしょうか。

 

残業をする人は仕事ができないという価値観がある

 スウェーデンで短時間労働が実践できている根拠のひとつに、残業をしていると、「仕事ができない人」という印象を周囲に与えてしまう点があります。

 スウェーデン人は、やむをえない場合にしか残業をしません。午後6時以降にオフィスで仕事をするのは、重大なトラブルが発生した場合のみです。頻繁に残業をしていると、「またトラブルを生じさせたのか」「あの人はトラブルが多い人だ」というイメージを持たれてしまいます。

 そのため、「早く仕事を終えて退社しよう」という心がけが自然と働きます。さっさとオフィスを去ることにより、仕事の処理が速くスマートであるという印象を与えることができます。定時よりも早く帰ることについて、周囲に気を使う必要はありません。定時より早く退社しても、周囲の人は「今日の仕事が早く終わったのか、さすが仕事が早いな」「順調に仕事が進んでいるようだ、余裕のある仕事ぶりだ」と好意的に捉えます。

 スウェーデンでは残業代が高いため、経営者が残業削減に本気で取り組んでいます。残業をさせた場合は、通常の1.5倍から2.0倍もの残業代を支払わなければいけません。経営者は「お願いだから早く退社してくれ」と考えるようになり、結果として「早く退社する社員ほど信頼できる」ということになります。日本のように「上司の目を気にして退社できない」ということではなく、むしろ「上司の目を気にして退社する」文化があるのです。

 ちなみにスウェーデンでは、労働組合の組織率が70%を超えています。日本の労働組合組織率が17.4%(PDF)であることに比べると、非常に高い数字です。そのため、残業すること自体に厳しい目が光っています。

 

仕事とプライベートをはっきり区別する

 スウェーデン人は、仕事とプライベートの時間をはっきり区別しています。仕事の後に上司と飲みに行くことはありません。何よりも家族の時間を大切にしているため、真っ直ぐ自宅に帰ります。スウェーデン人男性の育児休暇取得率は約90%であり、子供と少しでも長い時間を過ごすことを重要としています。

 多くの企業では、優秀な人材を獲得するために、充実した育児休暇制度を設け、子供が小さいときには在宅で仕事ができる環境を整えています。

 プライベートの時間を確保するために、消費者目線ではなく働き手目線を基本としたシステムが作られています。たとえば、スウェーデン発の家具量販店であるイケアでは、… 続きを読む

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田中 靖子

田中 靖子

法律家ライター

東京大学卒業後、2009年に司法試験に合格。弁護士として知的財産業務、会社設立等のビジネス関連の業務を扱う。現在は海外に在住し、法律関連の執筆や講演を行っている。

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