弁護士に学ぶ、社内トラブルの対処法

その発言はウソ?本当?言葉の裏を読むテクニック

2017.01.16 Mon連載バックナンバー

 セクハラやパワハラといった言葉が社会に浸透している一方で、その数は減っていません。厚生労働省によれば、都道府県の総合労働相談コーナーに寄せられる、職場における「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は年々増加しており、年間で6万件以上の相談が寄せられているといいます(2014年度の数値)。

 たとえ自社でそうした問題が発生していなくても、いずれ起こってしまう可能性も十分に考えられます。そんな時、ビジネスリーダーとしてどのように対応したらいいのでしょうか?

 こうした社内の問題が深刻化する最大の原因は、「社員の発言が食い違っており、誰の発言を信用したらよいのか分からない」ということです。この見極めを誤り、間違った決断をしてしまうと、今度はビジネスリーダー側の責任問題となります。

 この「見極め」の助けになるのが、弁護士が行っている「証拠分析術」です。裁判における証拠判断と同じ基準で事実を見極めることで、発言の真偽を見抜くことができます。

 

最も信頼できる「客観的データ」とは何か?

 トラブルが発生した時にもっとも重要なことが、「当事者の発言をどこまで信頼すべきか」という問題です。このとき、「客観的データと整合しているか」を確認することが有効です。

 ここでいう客観的なデータとは、電話の通話記録、写真、メールの文章、防犯カメラの映像などです。このような記録は、いつ誰が見ても同じデータを表示するため、「動かない証拠」として裁判でも重視されています。

 たとえば、Aさんから「先週木曜の23時ごろ、会議室でBさんから嫌がらせを受けた」という相談を考えてみましょう。

 まずは、タイムカードやパソコンのログイン時間を調査して、AさんとBさんの出退勤時間を確認します。そして、会議室の使用許可リストや、防犯カメラのデータが保存されているのであれば、そちらも確認します。

 これらの情報を参照し、木曜の23時ごろに2人が社内にいることが確認できれば、Aさんの発言の信頼性は高まります。これに対して、どちらかが既に20時ごろに退勤していることが判明した場合は、その発言を信用することはできません。

 注意すべきは、「あくまで客観的なデータとの一致を調査する」ということです。たとえば「従業員同士の発言が一致している」ということは、客観的なデータとは言い難いです。なぜなら、互いに口裏を合わせている可能性があるからです。ここでは「物証」の裏付けがあるかどうかが重要となります。

 

その発言にどのような意図があるか?

 とはいえ、従業員の発言は、信頼できるかどうかを見極める方法もあります。それが「個人的な感情で発言しているのではないか」という、発言の動機を調べることです。

 たとえば、社員であるCさんが「Aさんから何度もセクハラの相談を受けていたので、今回もセクハラがあったに違いない」と発言している場合に考えてみましょう。

 もしもCさんがAさんと親密だったり、あるいは交際している場合は、信頼性は高くありません。Aさんに有利な発言をしたいという心理が、自然と働いてしまうからです。

 反対に、… 続きを読む

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田中 靖子

田中 靖子

法律家ライター

東京大学卒業後、2009年に司法試験に合格。弁護士として知的財産業務、会社設立等のビジネス関連の業務を扱う。現在は海外に在住し、法律関連の執筆や講演を行っている。

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