ビジネスパーソンが知るべき世界の名言(第6回)

岡本太郎はなぜ「自分の中に毒を持て」と訴えるのか

2016.11.16 Wed連載バックナンバー

 「芸術は爆発だ」「なんだこれは!」「職業は人間」「己を殺せ」等々の過激な言動で知られる芸術家・岡本太郎。変人・奇人と評されることも少なくないが、彼の作品や言葉には「人間」に対する深い信頼と愛情が込められている。

 そして人間が持つ本来の力・本来の才能を発揮し、誰もが創造やイノベーションを可能にするために太郎が提唱しつづけた言葉がこれだ。

自分の中に毒を持て

 今回は毒=破壊をテーマに彼の言葉を紐解いていこう。

 

異端児・岡本太郎の半生

 1911年、太郎はマンガ家・一平と作家・かの子の長男として生まれた。父はなかなか帰宅せず、母は不倫相手を同居させるような人物で、その自由で天真爛漫な姿は人として尊敬できたが、親としては「最低」だった評している。

 太郎は当初、小学校もまともに通えない問題児で、最初の小学校を1学期で退学すると、2度の転校を経てようやく慶應義塾幼稚舎に落ち着いた。嫌いな先生の授業はずっと「耳を塞いでいた」というほどで、成績はクラス最低だった。

 芸術を愛してはいたが、文学者になるためには大学で勉強する必要があり、音楽家は声がよくなければならない等々の「くだらない条件ばかり」だったため、自由に描くことのできる絵を選んで東京美術学校(現 東京藝術大学)に進学。しかし「芸術は教えるものではない」と、父のパリ赴任が決まると休学して日本を発った。

 パリでピカソの『水差しと果物鉢』に「はじめてあんなに泣いた」というほどの衝撃を受け、「ピカソを超える」ことを決意。同じ抽象画をフィールドに選ぶと、人が変わったように絵に取り組みはじめたという。

taro000 第二次大戦を受けて帰国し、兵役を経て東京に戻ると、「絵画の石器時代は終わった。新しい芸術は岡本太郎からはじまる」と宣言して活動を再開。太郎の活動は絵画や彫刻に留まらず、当時は芸術家が手掛けることが少なかった工業デザインや商業デザインにも積極的に目を向けた。一例が近鉄バファローズのロゴである猛牛マークだ。

 1970年に万国博覧会のテーマ館プロデューサーに就任すると、万博のテーマ「人類の進歩と調和」を「卑しい」と一蹴し、独自の視点から『太陽の塔』を制作。巨匠・丹下健三のテーマ館大屋根に穴を開けさせるという暴挙に批判が噴出したが、結果的には大きな成功を収めた。

 同時期にメキシコに通い詰め、当地のホテルに依頼された『明日の神話』を制作。原爆が炸裂する瞬間を描いた大作で、『太陽の塔』と対をなす代表作とされている。

 

破壊の先にある「人間」への信頼

 世間の常識をあざ笑うような破天荒な言動、美術界に対する宣戦布告や丹下健三らの作品に対する破壊的行為、『太陽の塔』等に見られる破滅の描写……。「破壊」は太郎の人生を貫くひとつのテーマだった。その理由は… 続きを読む

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長谷川 大

長谷川 大

世界遺産&旅行ライター

横浜国立大学卒業後、出版社勤務。三国志・戦国時代・幕末・ギリシア神話など、歴史ものを中心に編集・ライティングを行う。世界一周の旅を経てフリーの編集者・ライターとして活動中。これまでの訪問国数は68か国、世界遺産は182か所。All About「世界遺産」公式ガイド。http://allabout.co.jp/gm/gt/563/

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