ビジネスパーソンが知るべき世界の名言(第4回)

なぜジョブズはハングリーさと愚かさを求めたのか?

2016.09.12 Mon連載バックナンバー

 世界初の量産型PC Apple II、PCの方向性を決定づけたMacintosh、音楽の聴き方を変えたiPod、電話を改革したiPhone、革新的デバイスiPad……

 いずれもヒット商品という枠を超え、業界を変革し、私たちの生活スタイルさえも一新してしまった。まさにイノベーションだ。

 これらはアップルコンピュータ(のちにアップルに改称)の創業者であり元CEOであるスティーブ・ジョブズが手掛けた製品であるが、彼の言葉を紐解いているとこうした数々のイノベーションが偶然ではなく意図的にもたらされていたことがよくわかる。その秘訣は雑誌『ザ・ホール・アース・カタログ』から引用されたこの言葉に集約されている。

Stay Hungry. Stay Foolish.
ハングリーであれ。愚かであれ。

 今回は数々の名言を通してジョブズとイノベーションについて考察したい。

 

アップル創業→クビ→復帰!その波瀾万丈な人生

 1955年、ジョブズはシリア人の父とアメリカ人の母の間に生まれ、誕生後まもなく養子に出されている。幼少よりエレクトロニクスに興味を持ち、父に工作の手ほどきを受けていた。

 高校から大学にかけてのジョブズはきわめてエキセントリックだった。盟友スティーブ・ウォズニアックと不法の電話装置を作って売りさばいたり、ヒッピーに憧れて幻覚剤を試したり、7か月もインドを放浪するといった具合。大学も退学してしまうが、興味を持った授業にはモグリで出席していた。

 76年、ジョブズはウォズニアックが組み立てた個人向けコンピュータ・Apple Iを「売れる」と確信し、ショップに営業をかけて大量に売却。翌年発表したApple IIは500万台を超える大ヒットを記録した。80年にアップルコンピュータの株式を公開すると、25歳で2億ドル以上の資産を持つ億万長者となった。

 しかし、ジョブズは独断専行を理由にメイン・プロジェクトを外され、わずか数人のMacintoshチームへ追放。Macintoshは84年に発売されたが、大量の在庫を抱えるとすべての業務を解任されて退社を余儀なくされた。

 その後、ジョブズは教育・研究のためのワークステーションの開発を目指してNeXTを設立し、『スター・ウォーズ』のジョージ・ルーカスからCG部門を買収してPixar(ピクサー)を立ち上げる。

 一方、アップルはWindowsに押されて経営危機を迎え、96年には株価が最安値を記録して倒産が目前に迫った。OSの開発を断念したアップルはNeXTを買収してOS技術を吸収し、ジョブズも非常勤顧問として復帰。やがて暫定CEOに就任した。

 ジョブズはアップルの再建を図るべく極秘プロジェクトを推し進め、98年にiMacを発表。PCの概念を打ち破る斬新なデザインとシステムで大ヒットを収め、アップルを軌道に乗せた。2000年にCEOの座に就くと、翌年iTunesとiPodを発表。音楽市場を改革し、音楽事業は大きな柱となった。07年にiPhone、10年にはiPadを発表し、PCを超える市場を創出。11年には株式の時価総額で世界最大の企業に成長した。

 

変人?支離滅裂?ジョブズの現実歪曲フィールド

 華やかな成功に彩られているジョブズだが、彼の凄みは失敗や危機にこそ表れている。

 本格的に担当した初代Macintoshは… 続きを読む

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長谷川 大

長谷川 大

世界遺産&旅行ライター

横浜国立大学卒業後、出版社勤務。三国志・戦国時代・幕末・ギリシア神話など、歴史ものを中心に編集・ライティングを行う。世界一周の旅を経てフリーの編集者・ライターとして活動中。これまでの訪問国数は68か国、世界遺産は182か所。All About「世界遺産」公式ガイド。http://allabout.co.jp/gm/gt/563/

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