ビジネスパーソンが知るべき世界の名言(第2回)

なぜ高杉晋作は「おもしろき世」を追い求めたのか?

2016.06.20 Mon連載バックナンバー

 江戸幕府が政権を返上する大政奉還を間近に控えたある日、高杉晋作はその病床でひとつの句を詠んだという。

おもしろき こともなき世を おもしろく――

 晋作の世話を務めていた尼僧・野村望東尼(もとに)はこう応じる。

すみなすものは 心なりけり――

 晋作は笑顔を浮かべると「おもしろいのう」とつぶやき、眠るように息を引き取ったという。時は1867年、明治日本誕生の前年の物語である。

 今回は日本を近代へと導いた高杉晋作の名言を追う。

 

雷電・風雨の人、高杉晋作とその時代

おもしろき こともなき世を おもしろく
            すみなすものは 心なりけり――

 この句の意味は、一般的に「世の中をおもしろく暮らせるようにするのは心の持ちようである」と解釈されている。しかし、先述のように下の句を詠んだのは望東尼だし、この句は死の前年に詠まれたものともいわれている。

 幼少時より、晋作は「暴れ牛」と異名を取るほどの行動の人。多くの志士を育てた吉田松陰は晋作と久坂玄瑞を松下村塾の双璧と呼び、「晋作の識、玄瑞の才」と評している。識、すなわち先を見通す洞察力や決断力・行動力は塾の中でも図抜けていたという。それは伊藤博文が晋作に贈った顕彰碑文に表れている。

動けば雷電の如く、発すれば風雨の如し。衆目駭然、敢て正視する者なし。これ我が東行高杉君に非ずや――

 いつ処刑されてもおかしくない5度にわたる脱藩、幕府を青ざめさせた英公使館焼き討ち、藩の金で勝手に軍艦を買うかと思えば、武士の誇りである髷をあっさり切り落として出家――その行動は奇想天外、無茶苦茶だ。

 しかし日本は無茶を必要としていた。世界は日本やタイといった数少ない独立国を除いて欧米の支配を受けており、インド史上最大のイスラム帝国・ムガールや、中国史上最大の王朝・清でさえ半ば植民地と化していた。世界史的に見れば日本は植民地化のまさに一歩手前にいたのである。

 そのような時代に晋作が成した功績をたどってみよう。

 

日本を倒幕に導いた高杉晋作の功績… 続きを読む

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長谷川 大

長谷川 大

世界遺産&旅行ライター

横浜国立大学卒業後、出版社勤務。三国志・戦国時代・幕末・ギリシア神話など、歴史ものを中心に編集・ライティングを行う。世界一周の旅を経てフリーの編集者・ライターとして活動中。これまでの訪問国数は68か国、世界遺産は182か所。All About「世界遺産」公式ガイド。http://allabout.co.jp/gm/gt/563/

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