成長を左右する最も大切なたった一つの考え方(第3回)

IBMを危機から救った「しなやかマインドセット」

2016.04.11 Mon連載バックナンバー

 スタンフォード大学心理学教授のキャロル・S・ドゥエックによる書籍『マインドセット「やればできる!」の研究』(草思社)を元に、成功する/しない人の違いを知る本連載。第2回では往年のテニスプレイヤー、ジョン・マッケンローを例に出し、天才と賞賛される人は、“人間の基本的資質は努力しだいで伸ばすことができる”と信じる「しなやかマインドセット」の持ち主でありながら、やがて“自分の能力は固定的で変わらない”と信じる「硬直マインドセット」に陥りやすいことを解説した。

 この「しなやかマインドセット」と「硬直マインドセット」は、何も人間だけに当てはまることはなく、ビジネスの世界にも影響を及ぼす。たとえば2001年、アメリカで発生した「エンロン事件」も、硬直マインドセットがもたらした不幸である。一方で、IBM が1980~90年代に迎えた危機を乗り越えられたのは、しなやかマインドセットが大きく影響している。

 今回はビジネス界のトップ企業やその経営者の事例から、この2つのマインドセットが及ぼす影響について解説する。

 

エンロン事件の原因は、経営者の“硬直マインドセット”

 エンロン事件とは、アメリカのエンロン社による不正発覚事件のことである。1985年にエネルギー会社として発足したエンロン社は、エネルギー業界の規制緩和が進む中、ブロードバンドビジネスや、気象現象が生み出すリスクを取引する「天候デリバティブ」取引も手がける多角的大企業に急成長した。

 しかし2001年10月、内部の不正が明かされ株価が暴落し、01年末に破産宣告を出し倒産した。その後、エンロンに続きさまざまな企業の不正会計が明るみにでたことで、アメリカ全体のコーポレートガバナンスが問われることになった。これらの企業の不祥事に対する厳しい罰則を盛り込んだのが、02年に制定されたサーベンスオックスレー法(通称SOX法)だ。

 エンロンの不正は、この流れの発端となったセンセーショナルな事件であり、倒産の負債額が当時の史上最高額であったことなどから、世間を揺るがす大事件となった。

 破綻の直接的原因は、利益を装う不正会計が明るみにでたことであるが、真の問題は「なぜそのような不正が行われ、破綻に至るまで続けられたのか」というところにある。ドゥエック教授は、その原因が経営者の“硬直マインドセット”に起因している、と本書で指摘した。

 

経営者の“硬直マインドセット”は、会社全体に広がる

 本書によると、エンロン創立者であり、会長兼CEOだったケネス・レイは「国王が農奴を見るような目で、会社を実際に動かしている社員たちを見下していた。リチャード・キンダー(エンロン社長)に対してもそうだった」という。キンダーは経営トップの中でただひとり、会社のごまかしを問題にし続けた人物だった。しかしレイは、… 続きを読む

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峯 英一郎/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

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ライター・キャリア&ITコンサルタント

IT企業から独立後、キャリア開発のセミナーやコンサルティング、さまざまな分野・ポジションで活躍するビジネス・パーソンや企業を取材・執筆するなどメディア制作を行なう。IT分野のコンサルティングや執筆にも注力している。
https://www.facebook.com/mineeii

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