経営の歴史に残る名言から、ビジネスの知恵をつかむ(第6回)

「いいとこ取り」しようとする企業はやがて凋落する

2016.01.25 Mon連載バックナンバー

 「イノベーション」は、決して新産業を生み出すような科学的偉業だけを指すことではありません。たとえば、「教科書」を生み出すことで一度に多くの生徒の教育に成功する、「ローン販売」を作り出すことで購買力の増大させる、といったこともイノベーションのひとつとなります。つまり、社会を大きく進歩させる変化がイノベーションなのです。

 経営学者のピーター・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker)は、自著『イノベーションと企業家精神』上田惇生訳,名著集5ダイヤモンド社,2007年 [原著1985年])にて、イノベーションを成功させるための戦略を分類し、企業名や事業の実例をあげながら、解説しています。彼は数多くの戦略に名前をつけており、たとえば「総力戦略」、「ゲリラ戦略」、「創造的模倣戦略」、「柔道戦略」、「ニッチ戦略」、「価格戦略」、「価値戦略」などがあります。

 すべてを紹介するときりがないので、今回は、ドラッカーが「柔道戦略」と名付けたイノベーション戦略に注目しましょう。柔道戦略の代表例は、盛田昭夫時代のソニーの経営戦略です。

 

ドラッカーが注目した日本の「柔道戦略」とは

 ドラッカーは柔道戦略について、「巨大なトップ企業が相手にしていないニッチな市場に参入して地位を築き、そこから全体を奪いにいく」戦略と定義しています。柔道戦略で新規参入する企業は「トップ企業が本気で守ろうとしない海岸の一部を確保する。そこで市場と売上を手に入れると次の一部を確保する。やがて島全体を確保する」(同p.276)という、先行者の弱みを攻撃するゲリラ攻撃です。

 その“ゲリラ攻撃”とは、具体的にどのような戦略なのでしょうか。ソニーを含む3社の例で見てみましょう。

【1】ソニーのトランジスタラジオ… 続きを読む

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鈴木 健治

鈴木 健治

特許事務所ケイバリュエーション 所長 弁理士

経済産業省産構審小委員会の臨時委員、(財)知財研 知的財産の適切な活用のあり方に関する委員会委員などを歴任。著書に「知的財産権と信託」『信託法コンメンタール』(ぎょうせい)、論文に「知材重視経営を支えるツール群に関する一考察(月刊パテント)」などがある。取引先の経営者・担当者にビジネス書の書評をお届けしている。公式サイト:http://kval.jp/

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