経営の歴史に残る名言から、ビジネスの知恵をつかむ(第5回)

ドラッカー曰く、イノベーションは誰でも生み出せる

2016.01.07 Thu連載バックナンバー

 「イノベーション」という言葉を目標として掲げる企業は少なく無いでしょう。イノベーションとは「技術革新」「新機軸」といった意味ですが、実際にはイノベーションという言葉を掲げるだけで、新機軸を打ち出せていない企業もまた、少なくないはずです。

 経済学者のピーター・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker)は、このイノベーションを、マーケティングと並ぶ自身のマネジメントの両輪としました。そして「イノベーションの方法を体系化する」という、誰もがイノベーションを創出できるやり方も考案しました。

 その画期的な方法が記された書籍が、今回紹介する『イノベーションと企業家精神』上田惇生訳,名著集5ダイヤモンド社,2007年 [原著1985年])です。今回は、ドラッカーが考える「イノベーション」の生み出し方について考えてみましょう。

 

石油、アルミ、教科書、ローン払い……すべてイノベーションから生まれた

 イノベーションというと、何かしらビジネスに好機をもたらすもの、というボンヤリしたイメージを持つ人が多いかもしれません。『イノベーションと企業家精神』では、イノベーションについて、「その成果を発揮すると、資源に、富を創造する能力を与える」としています(同p.8)。

 少々難しい表現なので、具体的な例で見てみましょう。たとえば、原油やボーキサイトは、人類のイノベーションによって初めて、石油やアルミニウムという貴重な資源となりました。イノベーションは、単なる岩石を、人類にとって価値のある資源に変えてしまうのです。

 ドラッカーは、こうした科学的偉業のみならず、社会的、経済的なイノベーションに注目しました。

 社会的なイノベーションの一つは、初等教育の分野です。初等教育を世界中に普及させるためのイノベーションは、ドラッカーによると、教師の育成や教育学の進歩ではなく、「教科書」です。教科書というイノベーションが、「平凡な教師でも一度に30人から35人の生徒を教えることができる」という新しい世界を生み出しました。

 イノベーションは、購買力さえ生み出しました。たとえば、19世紀、アメリカで農機具が開発されたとき、農家には購買力がなく、便利な農機具を購入できませんでした。農機具の開発者の一人は、さらに、ローン販売を思いつきました。ローン販売によって、農家は「過去の蓄えからではなく、未来の稼ぎから農機具を購入できるようになった。突然、農機具購入のための購買力という資源が生まれた」のです(同p.9)。

 ローン販売というイノベーションは、ローン販売がなかった時代にはあり得なかった購買力という新しい経済的な資源を、地球上に生み出したのです。ローン販売の仕組みがなければ、高価な農機具も、岩石に等しかったのです。

 

「人類を救うための薬」を獣医に売る?売らない?

 それでは、イノベーションをどのように生み出せば良いでしょうか。ドラッカーは本書でイノベーションのための7つの機会を例示しています。この機会に注目すれば、だれでも、仕事として、イノベーションを生み出せるといいます。

 その7つとは、… 続きを読む

全文(続き)を読む

続きを読むにはログインが必要です。

まだ会員でない方は、会員登録(無料)いただくと、続きが読めます。

鈴木 健治

鈴木 健治

特許事務所ケイバリュエーション 所長 弁理士

経済産業省産構審小委員会の臨時委員、(財)知財研 知的財産の適切な活用のあり方に関する委員会委員などを歴任。著書に「知的財産権と信託」『信託法コンメンタール』(ぎょうせい)、論文に「知材重視経営を支えるツール群に関する一考察(月刊パテント)」などがある。取引先の経営者・担当者にビジネス書の書評をお届けしている。公式サイト:http://kval.jp/

このページの先頭へ
Bizコンパス公式Facebook Bizコンパス公式Twitter