経営の歴史に残る名言から、ビジネスの知恵をつかむ(第4回)

会社の弱みを強みに変える!ドラッカー流SWOT分析

2015.12.18 Fri連載バックナンバー

 ビジネスマンであれば、「SWOT分析」という言葉をご存知の方も多いと思われます。これは事業計画を立案する際に、市場環境と自社の現状を付き合わせるために用いる手段のひとつです。「SWOT」とは、自社の強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)、市場の機会(Opportunities)と脅威(Threats)の略となります。

 SWOT分析の創作者が誰なのかは、経営学史上、はっきりしませんが、経営コンサルタントでもあったピーター・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker)は、1964年、SWOT分析の原型となる分析手法を詳述しました。前回もご紹介した『創造する経営者』上田惇生訳,名著集6ダイヤモンド社,2007年 [原著1964年])にて記されています。

 今回はドラッカー流の“SWOT分析”を用いて、市場におけるリーダーの地位を得る方法を考えてみましょう。

 

御社の主力製品はすでに時代遅れ?

 ドラッカーによると、事業とその経営状況を分析していくと、「常に、事態は想像以上に悪いことが明らかに」なります。ドラッカーは次のような事例を紹介しています(同p.172)。

[1] 自慢の製品が実は昨日の主力商品で、将来性がなかった。
[2] 品質と信じてきたものが、顧客にとってほとんど意味のないものだった。
[3] 自社の価値のある知識が、何の役にも立たないところに適用されていた。

 事業には、直視したくない課題が山のようにあります。しかし、成果をあげようという目的意識をもって、事業計画を構築していかなければ、敗北が待つばかりです。

 計画を立てることの重要性は、産業革命以降のさまざまなリーダーによって強調されていますが、ドラッカー流の事業計画に必要なのは、計画策定のテクニックではありません。理想やビジョンを描き、自社の卓越性を調べ上げ、人材配置の再計画をするという「リーダーシップ」なのです(同p.173)。

 

「機会」に焦点をあてる!ドラッカー流SWOT分析

 ドラッカーの分析の中心にあるのは「機会」です。彼は、世の中にある多数の機会の中から、最大の経済的効果をもたらす機会は何かを深く考えることが大事であるとしています(同p.177)。最大の機会は、新しい製品やサービスではなく、新しい産業を生み出します。

 ドラッカーは、この「機会」を活用した例として、電機産業を生み出した偉大な二人、ドイツの企業家ジーメンスと、アメリカの発明家エジソンを例示しています。

 イギリスの科学者であるファラデーの発見によって、発電機とモーターが理論的に可能となり、その科学技術に多数の科学者・技術者が夢中になりました。そのなかで、ジーメンスは、電車による交通という新しいビジョンをもって、モーターを開発しました。エジソンは電力供給という産業の一要素として電灯を発明しました(同p.178)。

 二人とも、電力を使うシステム全体を構想していました。この二人が、ファラデーの発見による「機会」を最大化し、新しい産業を生み出したのです。最大の機会は、新商品ではなく、新産業を生み出します。

 では、どうすれば「機会の最大化」が実現できるのでしょうか。そのポイントとなるのが、… 続きを読む

全文(続き)を読む

続きを読むにはログインが必要です。

まだ会員でない方は、会員登録(無料)いただくと、続きが読めます。

鈴木 健治

鈴木 健治

特許事務所ケイバリュエーション 所長 弁理士

経済産業省産構審小委員会の臨時委員、(財)知財研 知的財産の適切な活用のあり方に関する委員会委員などを歴任。著書に「知的財産権と信託」『信託法コンメンタール』(ぎょうせい)、論文に「知材重視経営を支えるツール群に関する一考察(月刊パテント)」などがある。取引先の経営者・担当者にビジネス書の書評をお届けしている。公式サイト:http://kval.jp/

このページの先頭へ
Bizコンパス公式Facebook Bizコンパス公式Twitter