経営の歴史に残る名言から、ビジネスの知恵をつかむ(第2回)

ドラッカー曰く「企業は破綻するから素晴らしい」

2015.11.27 Fri連載バックナンバー

 過去の偉人や学者たちが記した書籍は、ビジネスに大きく役立ちます。なぜなら、その著者が一生をかけて心血を注いだ学問や理論、経験や知恵が、読むだけで理解できるからです。

 後世に大きな影響を与えた、偉大な書籍の一部を紹介していく本連載の2回目では、前回に引き続き、経営学者であるピーター・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker)の『断絶の時代』(上田惇生訳,名著集7ダイヤモンド社,2007年 [原著1969年])を取り上げます。

 今回はこの『断絶の時代』に記された、ドラッカーの「組織」に関する考え方を紹介します。

 

知識社会で最も優れた組織は、政府や大学ではなく「企業」

 ドラッカーは「組織」について、「成果を最大にするための道具」と定義しています(同p.190)。人間が持つ知識の力を最大にする仕組みが、組織という道具なのです。知識を持つ者がただ一人いても、良い商品やサービスを生み出せません。組織という道具が、多種類の知識を集めて調和させ、顧客ニーズを満たし、社会に貢献する、とドラッカーはいいます。

 組織の姿は日々変わっています。第一次世界大戦前は、少数の経営者と大多数の肉体労働者で組織が運営されていました。たとえば、20世紀前半の大衆車として名高い、フォード自動車の「T型フォード(T型モデル)」をつくったアメリカのリバー・ルージュの工場では、少数の監督が、単純労働者に作業を命じていました。

 ところが1960年代には、フォードの工場も、数千の専門化した「知識労働者」が働く組織となったのです(同p.182)。

 ここでいう「知識労働」とは、どのような仕事でしょうか。現代日本社会を例に説明すると、実はほとんどの仕事が知識労働のカテゴリに入ります。農業、運送、販売、生産現場での仕事も、肉体労働ではなく、高度な知識が必要な知識労働になっています。コンビニエンスストアでも、引っ越しでも、販売でも、局面ごとの最適な判断や、膨大な商品知識が必要です。

 単純なマニュアル習得では足りず、教育を受けた知識ある者による現場での判断が、顧客満足に直結しています。

 今日、すべての業種の現場で、品質管理が研究されています。そして、働く人が、将来のために自分たちの知識をプレゼンテーションする機会は、天文学的に増加しています。「知識労働者」とはつまり、高校・専門学校・大学などで教育を受け、仕事に知識を使っている全ての人のことです。

 ドラッカーは、このような知識労働者が輝く社会の到来を、1960年代に予言していました。そして、知識社会で最も優れている「組織」は、政府でも大学でもなく、「企業」であると断言しました。その理由を聞くと、驚く人もいるかもしれません。ドラッカーによると、企業は「破綻し、消滅し得る」からこそ優れているというのです。

 

知識社会の組織で企業が最も優れている理由

 なぜ「破綻し、消滅し得る」運命にある企業が、知識社会でもっとも優れている組織なのでしょうか?ドラッカーの分析はこうです。… 続きを読む

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鈴木 健治

鈴木 健治

特許事務所ケイバリュエーション 所長 弁理士

経済産業省産構審小委員会の臨時委員、(財)知財研 知的財産の適切な活用のあり方に関する委員会委員などを歴任。著書に「知的財産権と信託」『信託法コンメンタール』(ぎょうせい)、論文に「知材重視経営を支えるツール群に関する一考察(月刊パテント)」などがある。取引先の経営者・担当者にビジネス書の書評をお届けしている。公式サイト:http://kval.jp/

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