結論から読み解く「嫌われる勇気」(第5回)

なぜ松下幸之助は不況でも社員を解雇しなかったのか

2015.12.17 Thu連載バックナンバー

 心理学者のアルフレッド・アドラーの思想が記されたベストセラー『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社刊、岸見一郎、古賀史健著)にて、アドラーは仕事の本質について「『他者貢献』である」としている。

 この言葉だけからすると、「それは、そうだろう、仕事はお客さまの役に立って初めて商売になるもの。当然のことだ」と考える人もいるだろう。アドラーはこの「他者貢献」について「仲間である他者に対して、なんらかの働きかけをしていくこと。貢献しようとすること」だと述べている。

 しかしアドラーはその一方で、他社貢献だけでは仕事としては不十分だともしている。他者に貢献するためには、「他者を信頼すること」が必要であるとしており、他者を信頼するためには、「自己を受容すること」が必要であるとしている。そして、“(1)他者貢献、(2)他者信頼、(3)自己受容という3つの項目は、ひとつとして欠かすことのできない、いわば円環構造して結びついている”としている。

 なぜ、アドラーはこのような複雑な円環構造を、仕事の本質だと主張するのか。その意味を、松下電器産業(現パナソニック)の創始者である松下幸之助の例で考えてみる。

 

「社員は仲間」松下幸之助リストラ回避の秘策

 2008年9月、100年に一度の世界的大恐慌が起こった。リーマンショックだ。日本でも、多くの企業が倒産し、あるいは、大リストラを余儀なくされ、大幅な給与カットを敢行するなど、大変な傷跡を残した。

 リーマンショックから遡ること約80年前の1929年、世界恐慌が発生した。当時の日本経済も大打撃を受け、深刻な事態に陥り、倒産やリストラが頻発していた。

 松下電器産業も例外ではなく、工場は在庫の山となった。当事、松下幸之助は病気静養中で、幹部から「従業員を半分にするよりほかない」との報告を受けた。

 しかし幸之助は、… 続きを読む

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峯 英一郎/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

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ライター・キャリア&ITコンサルタント

IT企業から独立後、キャリア開発のセミナーやコンサルティング、さまざまな分野・ポジションで活躍するビジネス・パーソンや企業を取材・執筆するなどメディア制作を行なう。IT分野のコンサルティングや執筆にも注力している。
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