人材を活かす脳科学と心理学(第2回)

記憶の強化でイマイチ社員をデキる社員に

2015.08.21 Fri連載バックナンバー

 専門用語や数字、あるいは語学などビジネスの現場では覚えておきたいことがたくさんある。デキる社員は物覚えがよく、しかも忘れない。一方でイマイチ社員は記憶が維持できずそのせいでミスが多い。

 ただ脳科学的に見ると、イマイチ社員とデキる社員の違いはほんのわずか。ちょっとした工夫で差を埋めることが可能なのだ。

 限られた人材の持つ能力を最大限に活かすことは、企業活動を効率化する最良の手法だ。その二本柱と言えるのが「やる気アップ」と「能力アップ=脳力アップ」である。

 

記憶力UPがシゴト力UPに直結する

 一般的にビジネスで求められる能力は、さまざまな要素からなる総合力だ。独創的なアイディアを思いつく発想力や取引先とうまく話をまとめる交渉力、厳しい状況でも頑張れる忍耐力など、いくつもの分野に跨った力が必要で、これがいわゆる“シゴト力”と言える。

 記憶力はそんなシゴト力を構成する重要なファクターの一つだ。たとえば専門知識を身につける際、記憶力に優れた人は短期間でしっかりと必要な事柄を覚え、すぐに仕事に活かすことができる。語学や資格などを取得する場合も、記憶力の良し悪しで効率がまったく違う。

 また記憶力はスキル取得だけではなく、人と接する現場でも大いに役立つ。昭和の大物政治家として知られる田中角栄元首相が初めて大臣に抜擢されたとき、有名大学卒の官僚に小学校卒という学歴をバカにされた。逆風の中、元首相は職務に関わる詳細をすべて記憶することで信頼を勝ち取ったのは有名な逸話だ。また官僚一人一人の出身校や誕生日なども記憶し、細かな配慮を示して人心をつかんだともいわれる。

 身近なビジネスシーンでも、たとえば仕事に関わる事象や数字を詳細に記憶していれば、取引先などからの信頼感が高まり、交渉を有利に進めることができる。

 

正しく集中してワーキングメモリを活性化する

 そんな大切な記憶力を高めるテクニックを覚える上でまず注目したいのが、記憶には短期記憶と長期記憶があるという点だ。それぞれの特性をつかんで活用することが記憶力アップの秘訣と言える。

 短期記憶はその名の通り、ごく短時間だけ覚えていればよいことを記憶しておくことを言う。

 たとえばトランプの「神経衰弱」では、どのカードがどの場所にあったかを一時的に記憶する。短期記憶が優れていれば、よりたくさんのカードを覚えていられるが、その記憶を来週まで保持する必要はない。

 ビジネスの交渉でも、「今ここで関連する資料の情報が頭に入っていれば、さまざまな質問に即答でき、取引を有利に進められる」というような状況がある。そういった際に役立つ短期記憶は「ワーキングメモリ」とも呼ばれる。

 この「ワーキングメモリ」の容量は人によって大きく異なる。仕事用の資料にたとえるなら、イマイチの人は3ページ分しか覚えられないが、デキる人は20ページある資料のほぼすべてを記憶できる、といった具合だ。

 しかし脳科学的に見ると、イマイチの人とデキる人の脳にそれほど大きな違いはない。最近の研究では、ワーキングメモリの容量を決めるのは頭の使い方であることが判明している。デキる人の脳は次のような3点に限られた脳力を振り向けているのだ。… 続きを読む

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谷垣 吉彦/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

谷垣 吉彦/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

フリーランスライター

アダルト層向け商品の販促プランニングや、経営・医療系書籍の企画・立案・執筆など、幅広い分野でライターとして活動する。大阪ミレニアムミステリー賞を受賞するなど、エンターテイメント分野での実績も評価されている。

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