桜子が聞く!先駆者たちのワーク・ライフ・バランス(第20回)

奇才プログラマ・竹内郁雄と未来の働き方を考える

2017.10.30 Mon連載バックナンバー

 人工知能(AI)関連のニュースが盛んになっている。AIの発達は、日本の労働人口問題を解決するという肯定的な見方がある一方で、人間の職を奪うという脅威論もある。どうなるかは不明だが、確実なのはこの技術革新は止まらないことだ。

 先行きの見えない未来に対して私たちはどんな備えが出来るだろう。私は、東京大学名誉教授の竹内郁雄(71歳)にこの問いを投げることにした。

 彼は1970年代から人工知能の研究を行っていた計算機屋(プログラマ)で、Lisp(注)の世界的権威でもある大御所ホワイトハッカーだ。今も現役でプログラムを書き、独立行政法人情報処理振興機構で若手IT人材の育成と発掘をライフワークとしている。折しも大学生たちに講演をした帰りに、わが家で話を聞いた。

注:Lispとは「人工知能(Artificial Intelligence)」の提唱者、ジョン・マッカシーが開発した、今も趣味人によく使われているプログラミング言語の1つ。

 

鯛焼きがあった方がいいじゃない!

 竹内は地図代わりのデジタル機器を片手に、「迷子になった」と言いながら、リュックを背負って現れた。もともと知人の紹介で、友を迎えるような気持ちでいたが、やはり自宅で初対面の人を出迎えるのは変な感じがした。まずは場を和ませようと、彼が落ち着いたところで準備していたセリフを口にした。

桜子「頼もう! 実は聞きたいことがあるのでござる」

竹内「は? 道場破りですか?」

 「違う、違う」と私は即座に鯛焼きを差し出し、言った。

桜子「覚えていませんか?このセリフと鯛焼き。先生の著書『初めての人のためのLisp』の第一章のくだりを再現したんです、ハハハ」

 竹内は状況を理解し、すぐに鯛焼きをパクっと食べた。カメラマンが撮影の妨げになると包みをよけた瞬間、「これはあった方がいいんじゃない?」と真面目な顔で、一口だけ包みの上に残した。彼のメディアセンスは抜群だ。

 

AI時代のワークライフバランスとは?

 彼には事前に、今日のテーマは「AI時代のワークライフバランス」と伝えていた。さっそく話を振ったら、それまでよく喋っていたのに、腕組みして唸った。

竹内「それね、難しいテーマだよ。AIが出てきたら確かに仕事は楽になる。ただ、人間がやらなくてはならないことはいっぱいある。まだまだ、桜子さんが楽をして給料が貰える時代は来ないのでは?」

 確かにまだ関係ない話かもしれない。だが、AIが担う仕事は増えつつある。人間にしかできない仕事と、AIに置き換えられる仕事が並んだら、雇用はどうなるだろう。働かなくていい社会になって、やることがなくなれば、私たちは何をして暮らすのだろう?

桜子「私、若い頃に人が働く意味を考えていたことがあるんですよ。もしかしたら仕事は人生の“暇潰し”ではないか、と。つまり人間は仕事がなかったら生きていけないのではと思うんです」

竹内「あっ、それは私も同感。結局、人間は仕事をするために仕事を生み出している、というところがあるよね?」

桜子「はい。仕事を通して、存在意義を確認している人もいますね」

竹内「そうそう。そういう人は、明日から遊んで暮らしていいよ、と言われると、かなり困ってしまう。人間ってね、仕事みたいなことをしていないとやっていられない生き物ではないかと思う」

桜子「それこそ、仕事がなくなったら哲学がはやるんじゃないかと」

竹内「うん、そうだと思います。だからね、AIが出てきても、私は人間の仕事はなくならないと思うから、ワーク・ライフ・バランスについても、遊びと生活と仕事のバランスはどんな時代になっても変わらないんじゃないか、と思いますね」

桜子「先生は、人間の仕事はなくならない、と考えますか?!」… 続きを読む

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桜子

桜子

ライター

渋谷区在住。通信会社に勤務する傍ら、働く女子の立場からWebメディアのメルマガを書き始め、IT業界の著名人にインタビューを重ねて話題となる。その後、日経ウーマンやアスキー等での連載を経て、2011年、出産を機に育児に専念。2014年4月に職場復帰し、子育てと仕事の心地良いバランスを模索中。(VIVA!桜子の超気まま渋谷/代官山・子育て日記:http://sakurako.cc/friends)

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