観るだけでためになる、名作ビジネス映画傑作選(第2回)

“お荷物部署”が世界を動かす!『陽はまた昇る』

2015.01.25 Sun連載バックナンバー

 今でこそ、ビデオと言うとDVDが主流だが、少し前まで一般家庭で使われていたのはカセットテープ式の「VHS」だった。実は、このVHSは日本が初めて生んだ世界規格。家庭用ビデオとして世界中で使われることになった大ヒット製品である。

 今回紹介する映画『陽はまた昇る』(2002)は、VHS誕生にまつわる実際のエピソードが元になっている。高度経済成長が陰りを見せ始めた1970年代の日本。コスト削減、人員削減といった、現代ともリンクするような厳しい経済状況の中で、いかにしてグローバル・スタンダードが生まれたのか。そこには、世界を目指す男たちの、執念のドラマがあった——。

 

日本初の世界規格は“お荷物部署”が作った

 映画の舞台は、かつての家電メーカー、日本ビクター社(2011年にJVCケンウッドに吸収合併)。テレビが普及し、家庭用ビデオの登場が待ち望まれていた1970年代当時、ビデオ事業は当たれば5,000億円のビジネスになると言われ、日本ビクターもビデオ事業に乗り出していた。しかし、同社のビデオ事業部は不良品続きで返品が多く、いつ事業の解散が行われてもおかしくないほどの不採算部門。本社経営陣は、事業部の縮小と大規模な人員削減を検討し始める。

 そんな中、ビデオ事業部長に異動を命じられたのは、かねてから家庭用VTRの開発を夢見ていた、加賀谷静夫だった。会社のお荷物部署への左遷で、社内では「クビ同然」と噂をされながらも、加賀谷は密かに家庭用VTR開発を決める。

 原作は、ビジネス・ノンフィクション大作の『映像メディアの世紀』(佐藤正明著/日経BP社/文藝春秋)。主人公の加賀谷静夫は、のちに日本ビクター副社長に就任した高野鎭雄氏がモデルであり、ソニー、松下、日本ビクターといった企業や、“経営の神様”こと松下幸之助氏も実名で登場する。

 人情に厚い加賀谷を演じるのは西田敏行。リストラ寸前の社員たちをまとめ、鼓舞するリーダーを見事に体現する。そのほか、加賀谷の補佐のエリートサラリーマン役には、『硫黄島からの手紙』『インセプション』『ゴジラ』などハリウッドでもひっぱりだこの渡辺謙。松下幸之助役には、数々の受賞歴を誇る名俳優、仲代達也を迎えるなど、豪華な俳優陣が物語を盛り上げる。

【映画情報】

タイトル: 『陽はまた昇る』
監督: 佐々部清
キャスト: 西田敏行/渡辺謙/仲代達矢/緒方直人/真野響子
制作:2002年/日本
時間:108分
配給会社:東映

 

“無茶でもやるしかない。時代はもう目の前に来ている”

 本作の特徴は、実在する会社や人名をそのまま登場させたこともあり、臨場感に溢れている点だ。家庭用ビデオの規格採用をめぐる企業間の生々しいやり取りや、「企業戦争に勝つには開発しかない」という技術者たちの訴え、「大手メーカーの販売網が欲しい」という下請け会社の素直な声も描かれる。… 続きを読む

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早川 すみれ

早川 すみれ

フリーライター

インタビュー記事から大手企業の社内報企画・制作、企業のホームページコンテンツの企画や広告コピーまで幅広く手がけるフリーライター。

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