組織が伸びる/ダメになる目標設定

「背伸びしないと達成できない目標」は逆効果である

2017.12.02 Sat連載バックナンバー

 「大きく背伸びをしないと達成できないような高い目標を掲げた方が、組織も人も飛躍的に成長する」、という考え方があります。こうした目標を「ストレッチ目標」と呼びます。

 「ストレッチ」というキーワードは、アメリカの名経営者ジャック・ウェルチ氏がゼネラル・エレクトリック社で導入して、目覚ましい成果をあげたことで広く知られています。現在のマネジメント手法の定番となっています。

しかし、ハーバード・ビジネス・レビュー誌に掲載された論文「The Stretch Goal Paradox」では、ストレッチ目標を乱用する危険性が述べられています。組織の状態によっては、ストレッチ目標が逆効果になり、業績不振や不祥事といった大きなマイナスにつながりかねないというのです。

 

ストレッチ目標の乱用が業績不振や不祥事を誘発する

 ストレッチ目標とは、現在の仕事の延長線上では到底達成できそうにない遠い目標です。これまで多くの企業が「ストレッチ目標を掲げることで、新たに革新的な手法やアプローチが生み出されるのでは」と期待し、起死回生の策として挑戦的なストレッチ目標を設定してきました。

 しかし、ストレッチ目標は挑戦的であるがゆえに、大きく失敗するリスクも高くなります。乱発されたストレッチ目標がどれも未達に終わった場合、社員は不安や無力感にさいなまれ、業績不振や組織の崩壊にまでつながるケースもあります。

 たとえば米ヤフーは、不振からの脱却を目指し、2012年に新CEOマリッサ・メイヤー氏の下で「5年連続の2桁成長」や「8つの挑戦的な目標」を掲げました。しかし結果的に売上高は横ばいから損失を計上するまでになり、2016年に通信大手のベライゾンに買収されるという悲劇的な結末を迎えました。

 残念ながら日本でも、度を越したストレッチ目標による弊害が起こっています。記憶に新しいのは、東芝の不正会計問題でしょう。調査の中で明らかになった東芝の「チャレンジ」という慣習、つまり上から与えられる到底実現できないストレッチ目標のプレッシャーが、業績の偽装という大きな不祥事を引き起こしてしまったのです。

 

ストレッチ目標がトヨタで成功しオペルで失敗した理由

 このような失敗を防ぐためには、あらかじめ組織がストレッチ目標への挑戦に適した状態かを分析すべきであると当論文では述べられています。分析に使われるのは2つの指標、「直近の業績が好調か」と「経営資源に余剰があるか」です。

 まずは「直近の業績が好調か」ですが、… 続きを読む

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前野 智子

前野 智子

フリーライター。大企業・ベンチャー双方での就業経験や海外でのビジネス経験を活かし、ビジネス関連記事やインタビュー記事等の執筆を手掛ける。

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