「データ分析」が組織を強くする(第1回)

オバマ大統領誕生の裏にあったデータ分析とは

2017.08.16 Wed連載バックナンバー

 経営に貢献するデータ分析の方法は進化しており、従来の「財務会計」「管理会計」「A/Bテスト」といったものから、近年は「因果関係による予測モデル」「デジタル・マーケティング」といったものへと移りつつあります。データに基づく経営は、売上や市場環境の変化などの将来を予測する精度を高め、経営を改善したり、従業員の目標を明確にすることが可能です。

 たとえば、2008年のアメリカ大統領選挙で、オバマ氏の陣営はWebサイトの構築にデータ分析を活用し、巨額の寄付を集めることに成功しました。担当者は、Googleで最先端のデータ分析をしていたプロフェッショナル、ダン・シローカー氏です。

 オバマ氏の寄付金集めを成功に導いたデータ分析とはどのようなものだったのでしょうか? 今回は、『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(伊藤公一朗、光文社新書、2017年)という書籍にて紹介されている、2008年のアメリカ大統領選挙におけるオバマ陣営のWeb戦略から、データ分析の重要性を説明します。

 

ほぼ決定していたデザイン案を「やっぱりテストしてみよう」

 オバマ前アメリカ大統領は2008年の選挙にて、支援者と繋がるためWebサイトを制作しました。選挙や広報のプロフェッショナルが集まり、どんなデザインや言葉で訴えるかを検討し、デザイン案はほぼ決定していました。しかし決定直前に、前述のシローカー氏が「テストをしてみよう」と提案しました。

 ここでいうテストとは、サイトに掲載する写真や、ボタンにする言葉の組み合わせを評価し、最も効果的な組み合わせに決めようというものです。この時行われたのが、AとBを比較して、どちらが効果的なのかを比較する「A/Bテスト」です。

 シローカー氏の提案からオバマ候補のWebサイトではA/Bテストが行われ、テスト結果のデータが分析されました。その結果、会議で決定寸前だったものとは異なるデザインが採用されることになりました。

 テストで変更されたサイトの効果は抜群でした。訪問者のメールの登録率は、当初のデザイン案より3.34%高く、結果的にオバマ陣営は72億円分の寄付を追加で集めることに成功しました。

 

72億円を集めたデザイン案とは

 オバマ陣営で行われたテストは次のようなものでした。

 プロフェッショナルたちによる会議では、6通りの画像案と、4通りのメッセージボタン案が示されていました。これらをすべて使うと、合計で24の組み合わせができます。

 選挙や広報の専門家が結集したチームは、ノーネクタイのオバマ候補が支援者の旗に囲まれて一人で写っている画像と「登録 (Sign Up)」のメッセージボタンの組み合わせを選びました。

 シローカー氏はテストを実施するため、オバマ候補のWebサイトへアクセスすると、24通りのデザインの組み合わせがランダムに表示されるプログラムを作りました。

 この結果、会議で決まりかけていたデザイン案は、ボタンが4種類中… 続きを読む

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鈴木 健治

鈴木 健治

特許事務所ケイバリュエーション 所長 弁理士

経済産業省産構審小委員会の臨時委員、(財)知財研 知的財産の適切な活用のあり方に関する委員会委員などを歴任。著書に「知的財産権と信託」『信託法コンメンタール』(ぎょうせい)、論文に「知材重視経営を支えるツール群に関する一考察(月刊パテント)」などがある。取引先の経営者・担当者にビジネス書の書評をお届けしている。公式サイト:http://kval.jp/

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