「プレゼンティーイズム・コスト」に潜む危険

「体調が悪いけど無理に出勤」が経営の妨げになる

2017.01.12 Thu連載バックナンバー

 多くの会社で、無欠勤の社員を表彰するような光景は見られがちです。しかし、毎日出勤していたその社員が、毎日100%のパフォーマンスを発揮できていたとは言い切れません。中には体調が悪いのに無理に出勤し、うまく力を出せなかった日もあったでしょう。

 倦怠感や体調の悪い社員があえて出勤することで生まれるリスクを「プレゼンティーイズム・コスト(出勤コスト)」といいます。たとえば、パフォーマンスが落ちている社員がいる場合は、出勤するよりも数日休ませたほうが、その後の効率が上がり、むしろプラスになるということがあるのです。

 今回は、プレゼンティーイズム・コストに潜む危険性について紹介します。

 

欠勤対策よりも難しい「プレゼンティーイズム」対策

 「プレゼンティーイズム(presenteeism)」とは、社員が出勤しているものの、何らかの健康問題によって最善のパフォーマンスを維持できない状態のことを言います。体の不調によって欠勤を繰り返す状態を表す「アブセンティーイズム(absenteeism)」の対義語として生まれました。

 アブセンティーイズム・コストは、認識しやすい「目立つ」コストです。欠勤の多い社員がいれば、その穴を埋めるために他の社員が仕事を増やしたり、残業をしたりする必要があります。このような状態が続けば、今後の業務設定にも大きなズレが生じてくるかもしれません。企業にとっても見過ごすことはできないので、当然、勤怠管理を厳しくチェックし、該当する社員を指導するなどの対策を取ることになります。

 対して、プレゼンティーイズム・コストは目に見えないものです。個人の体調や仕事の能率の細かい変化は、客観的に把握することができません。

 しかし、実はこの目に見えないプレゼンティーイズム・コストのほうが、アブセンティーイズム・コストよりも大きく、経営の妨げになっているのではないかと注目され始めているのです。

 

無理に出勤するより、休んだ方がコストが安い?

 現在、さまざまな研究機関が、プレゼンティーイズム・コストの「見える化」を試行しています。

 たとえばWHO(世界保健機関)では、プレゼンティーイズム・コストを「見える化」するために、「WHO-HPQ(Health and Performance Question)スケール」(WHO 健康と労働パフォーマンスに関する質問)というアンケートを作成しています。

 アンケートの内容は多岐にわたりますが、たとえば以下のようなものがその一部です。

・あなたの会社、部署における一般的な業務において、平均的な従業員が、その業務を処理した場合のパフォーマンスを10段階で評価するといくつですか?

・あなたの過去1~2年間の業務におけるパフォーマンスを、10段階で評価するといくつですか?

・直近の4週間(28日間)において、あなたの業務におけるパフォーマンスを、10段階で評価するといくつですか?

 このWHOのアンケートを、東京海上日動の健康保険組合が同組合員に対し行ったところ、… 続きを読む

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高島 ちなみ

高島 ちなみ

フリーライター

2012年より執筆活動を開始し、ビジネスコラム・グルメレポートなどを執筆。無類の図書館好き。趣味が高じて司書資格も取得。ライブラリアン・検索技術者として、WEB媒体向けのレファレンス支援も行う。

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