ビジネスリーダーが知っておきたい「有給」の話

来たるべき「有給義務化」をビジネスに活かす方法

2016.11.14 Mon連載バックナンバー

 日本における有給休暇消化率は約60%で、先進国の中で最低水準です。フランスやスペインの100%、シンガポールの93%と比べても、極めて低い水準です(数値はエクスペディア調査に基づく)。

 このような現状を受けて、厚生労働省は2020年までに消化率を70%に上げることを目標に掲げ、有給消化を義務付ける法案を2015年4月に国会に提出しました。安倍内閣は2017年以降に法案(PDF)を成立させることを目指しており、この法改正を前に厚生労働省は計画的付与の制度を推進しています。

 導入が見込まれている有給の計画的付与制度とは、どのようなものなのでしょうか。そして、企業はどのように対策しておくべきなのでしょうか。今回は、企業が同制度を活用する方法と、同制度を導入する際の手続きについて解説します。

 

なぜ有給消化が「義務化」されるのか?

 そもそも有給は社員がリフレッシュするための制度なので、社員が自由に日程を決めることが原則です。そのため、会社が有給の日程に口出しをすると、有給妨害として労働法違反になってしまいます。繁忙期に有給を希望する社員がいても、会社は口出しをすることができません。

 もちろん、会社の正常な運営を妨げる場合には、会社が日程を変更することができますが、実際には「正常な運営を妨げる」と認められるケースはごく稀です。判断を誤ってしまうと、労働法違反となり、労働基準監督署から指導を受けるおそれがあります。

 その一方で、有給の取得を社員の判断に任せていては、なかなか消化が進みません。電通の新入社員が過労自殺をしたニュースにより、労働法違反に対する社会の目は厳しくなっています。有給消化率の低い企業の企業イメージの低下は深刻な問題になりつつあります。このような問題を解決するのが、有給休暇の計画的付与という制度です。

 現在、導入が検討されている計画的付与の制度とは、簡単にいえば「会社が従業員の有給の日程を決定することができる」という制度です。たとえば、「来月3日と7日を有給にするから、会社に来なくてよい」と、一方的に休暇を指定することができます。

 この制度の対象とできるのは、「年次有給のうち5日を超えた部分」です。具体的にいえば、1年間の有給が15日の社員については、10日分の有給を会社が指定することができます。残りの5日分の有給については、社員がいつでも取得できるように残しておかなければいけません。

 

計画的付与制度で企業が得られるメリットとは?

 計画的付与制度が導入されることによる会社のメリットは、大きく分けて3つあります。1つ目は、… 続きを読む

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田中 靖子

田中 靖子

法律家ライター

東京大学卒業後、2009年に司法試験に合格。弁護士として知的財産業務、会社設立等のビジネス関連の業務を扱う。現在は海外に在住し、法律関連の執筆や講演を行っている。

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