リオオリンピックメダリストに学ぶ「勝利の法則」(第3回)

シンクロ井村コーチが“必ず”メダルをもたらす理由

2016.11.02 Wed連載バックナンバー

 井村雅代氏がコーチについたシンクロナイズドスイミングのチームは、必ずオリンピックでメダルを獲る。「“必ず”は言い過ぎでは?」と疑う人もいるかもしれないが、これは紛れもない事実である。

 井村氏がシンクロ日本代表を指導しはじめたのは、正式競技化された1984年のロサンゼルスオリンピックから。以降、2004年のアテネオリンピックまでの20年間、日本は6回全ての大会におけるシンクロ競技でメダルを輩出し続けた。

 その後、井村氏は日本代表のコーチを去り、中国のコーチとなった。すると、日本は2008年北京、2012年ロンドン大会ともにメダルを逃し、代わってこれまでシンクロでメダルを獲ったことのなかった中国が、北京で初めてのメダルとなる銅メダル、ロンドンで銀メダルと、2大会連続でメダルを獲得した。そして、2016年リオオリンピックでは、井村氏が再び日本のヘッドコーチに就くと、日本は見事に銅メダルを奪い返した。

 なぜ井村コーチが指導するチームはメダルを獲れるのだろうか?彼女の著作からその理由を読み解く。

 

基本的に教育者でありながら、同時に勝負師でもある

 コーチとして輝かしい実績を残した井村氏は、自身もシンクロのトップアスリートだった。日本選手権では2度の優勝を達成。1972年のミュンヘンオリンピックにも出場している。オリンピック出場後は大阪市内で教員として中学校に勤務。1978年には日本代表のコーチに就任し、ロス五輪後の1985年には「井村シンクロクラブ」を開いている。

 井村氏は自らの指導法について、「『勝負師』であるが、肝は『教育者』」であると表現する。

 スポーツ界の選手指導でよく交わされる議論の一つに、「勝負にこだわる」のか、それとも、勝敗以前に「人間性を育てる」べきなのか、というテーマがある。人生は、選手としての期間より、その後の人生の方が長いため、人間性は重要である。一方で、スポーツ競技のコーチである以上、「勝つ」というミッションが課せられている。井村氏はその両方を兼ね備えているという。

 井村氏は自らを「心の才能を伸ばす教育者」と呼ぶ。ここでいう“心の才能”とは、「努力できる才能」のことである。何をするにしても、努力することなくして成しえることはない。井村氏は「努力」が何事にも通じる一番大切なものだと考えており、できないのは「努力が足りないから」だと公言する。

 しかし、「努力すればできる」と言いながら、選手が負けていたらその理屈が成立しない。だから、井村氏は「勝負師」に徹し、選手を勝たせる努力をする。たとえば採点だ。シンクロの勝敗は採点で決まる。シンクロを知り尽くす井村は、選手が点数を取るためには、どんな演技が必要で、そのためにはどんな練習が必要なのかがわかる。ゴールを知っているからこそ、そのために今何が足りないのか気付き、選手に教えることができるのだ。

 

「これ以上できない」といってきた時が分かれ目

 とはいえ、「努力してもできない」と考えている選手の意識を、「努力すればできる」と変化させるのは容易ではない。そのため、井村氏は選手たちに… 続きを読む

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峯 英一郎/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

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ライター・キャリア&ITコンサルタント

IT企業から独立後、キャリア開発のセミナーやコンサルティング、さまざまな分野・ポジションで活躍するビジネス・パーソンや企業を取材・執筆するなどメディア制作を行なう。IT分野のコンサルティングや執筆にも注力している。
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