こんな人事評価制度は現場を混乱させるだけ(第1回)

「360度評価」では社員の正しい評価はできない!?

2015.10.14 Wed連載バックナンバー

 公平公正な人事評価制度の設計・構築は、多くの企業にとって永遠の課題ともいえます。そんな中、20世紀後半から始まったグローバル化の流れを受け、世界的に導入が進んでいるさまざまな人事評価制度が日本企業でも注目され、導入されています。

 その中でも比較的多くの先駆的企業に採用されている「360度人事評価制度」(以下、360度評価)と「部門別利益評価制度」です。

 元々は欧米企業で生まれたこれらの評価制度は、一見平等ですべての従業員に公正で、理想的な制度であるように見受けられます。しかし社風や制度の設計・運用次第では、陳腐な制度に成り下がってしまう危険性を含んでいます。

 多くの企業の人事に携わってきた筆者が、実際に見た陳腐化の事例を具体的に挙げその課題を浮き彫りにするこのシリーズ。まず第1回目では「360度評価」を取り上げ、制度に潜む思わぬ落とし穴を明らかにしていきたいと思います。

 

上司が部下を、部下が上司を互いに評価する360度評価は効果なし!?

 360度評価は、別名「多面評価」とも言われ、一人の社員を上司・同僚・部下という、文字通り360度自分を取り巻く会社の人間が評価し人事考課に反映させる仕組みです。

 元々は欧米企業で考案され、日本でも先駆的な企業から順次導入されていった制度ですが、それまでの「直属の上司が部下を評価する」という一方的な人事評価制度と比較して、一見公平かつ公正で、現在では多くの日本企業で導入が進んでいます。

 ただし、制度自体は優れていても、その設計や運用に「日本的経営思考」が加味されると途端に陳腐化し、弊害と化す事例は枚挙に暇がありません。

 その原因はどこにあるか、以下具体的な事例を踏まえ、探ってみたいと思います。

 

「ただの2代目ボンボン社員」が「スーパービジネスマン」へ

 社長の息子(娘)が、将来的な後継ぎとして入社する……日本の、特に中小企業ではよくあることかと思います。

 従業員500名近くを抱えるある企業も、社長の息子が1人の社員として入社し、これまた当たり前のようにいきなり社長直属の部署で管理職に就きました。よく言えば帝王学を学ぶということでしょう。ただ、これまたご多分に漏れずあまり仕事ができない社員であり、360度評価を導入する前は「ゴマすり上司だけが高評価を与え、周囲は冷めた目で見守る」だけの存在でした。

 しかし、360度評価の導入を機に、様相が一変。その2代目が… 続きを読む

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桂 浩一

桂 浩一

株式会社ネクストアド人材系ライター

大手就職情報会社で営業を経験した後に広告代理店にてセールスプロモーション戦略を担当。その後外資系ITベンチャーで営業統括マネージャー、人材育成企業で執行役員を歴任し、現在は福岡を拠点をして人材とITを融合した地方創生支援に携わる。その一方で、webライティングやweb制作の受託等、地方に不足しがちなクリエイティブ分野を補完する便利屋として幅広い活動を行っている。

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