経営者が知っておきたいビジネス理論入門(第86回)

350円ピザの破綻から考える”薄利ビジネス”のリスク

2017.05.18 Thu連載バックナンバー

低価格を武器に事業を拡大してきた企業の倒産が相次ぐ

 2017年4月28日、低価格のピザを武器に急成長を遂げていた遠藤商事・Holdings.が破産するというニュースが駆け巡りました。

 遠藤商事・Holdings.は、ピザ焼き職人の技をシステム化し、窯焼きピザを1枚90秒で焼くことによって大幅なコスト削減を実現。わずか350円でマルゲリータピザを提供することで数々のメディアに取り上げられるなど話題となり、2010年に開始した事業は急成長を遂げ、2017年にはフランチャイズも含めおよそ80店舗にまで拡大していました。

 一方で急拡大の歪みは資金繰りに現れ、出店費用やそれに伴う人件費、広告費などが増大して経営を圧迫していきます。また、膨れ上がる出費に比例するように銀行からの借入金も増え、限界にまで達していました。そして遂には、仕入れ先への決済や従業員への給料の支払いまで滞るようになり、最終的に破産を選択せざるを得ない状況に追い込まれてしまったのです。

 また、低価格ピザで急成長した新興外食企業の倒産から遡ること1ヶ月。3月27日には格安ツアーを売りにした旅行代理店てるみくらぶも資金繰りに行き詰まり、破産申請を行っています。

 てるみくらぶは、1973年創業の旅行代理店の一部事業を分社化するという形で1998年に事業を開始。格安のパッケージツアーを武器に業容を拡大させ、2016年9月期の売上高は195億円にまで達していました。

 同社はこれまで、航空会社やホテルから、大量の座席や部屋を格安で仕入れて、パッケージツアーを組み、他社が追随できないような低価格で販売して、多くの顧客を獲得してきました。

 ですが、インターネットの発達と共に、航空会社やホテルが自社のホームページで早期の予約に対して大幅なディスカウントを提示して、空席や空室を埋める仕組みを築いたり、航空会社がより小型の飛行機を導入し効率的な運航に努め始めたりした影響で、破格の値段での仕入れが難しくなり、コストは大幅に増加していきます。一方で値上げをすれば、安さに惹かれて利用してきた顧客離れが懸念されるために、赤字でも驚くような安さのパッケージツアーをやめることはできなかったのです。

 苦肉の策として、ツアーの申し込み者が現金で支払った場合に特別な割引を提供するというキャンペーンを実施し、早期の現金決済を促し、先にキャッシュを手にして、数か月後に航空代金や部屋の決済を行うという自転車操業に陥っていたのです。

 ただ、このような赤字を出してまでの自転車操業はいつまでも続くわけがなく、銀行や投資家からの資金調達の道が立たれた時点で、お金が回らなくなり、経営破綻につながっていったのです。

 

薄利ビジネスのリスクが高くなる3つの理由とは?

 この両社の共通点としては、薄利ビジネスで事業を拡大してきたということが挙げられます。顧客は低価格に魅了され、両社の提供する商品やサービスを選択するに至ったのです。

 ビジネスにおいて、事業拡大するうえで低価格は非常に強力な武器となりますが、低価格が薄利で成り立っている場合、そのリスクを十分に認識しておかなければ、両社のように経営破綻にまで追い込まれることがあります。

 薄利ビジネスのリスクが高い要因としては次の3つが挙げられるでしょう。… 続きを読む

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安部 徹也

株式会社 MBA Solution 代表取締役

株式会社 MBA Solution 代表取締役。2001年MBAを取得後、経営コンサルティングの事業で起業。近著に『最強の「イノベーション理論」集中講義』 (日本実業出版社)や『ぐるっとマーケティング』(すばる舎リンケージ)などがある。

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