経営者が知っておきたいビジネス理論入門(第79回)

RIZAPはなぜ不振のジーンズメイトを買収するのか?

2017.01.31 Tue連載バックナンバー

長期低迷するジーンズメイトの買収を決めたRIZAPグループ

 『結果にコミットする』というコマーシャルで、次々と著名人のダイエットを成功させ急成長を続けるRIZAP(ライザップ)グループが、EDWIN(エドウィン)やLevi’s(リーバイス)などを中心にしたカジュアルウェアを販売するジーンズメイトを買収し、子会社化することを発表しました。

 ただ、ジーンズメイトはここ最近ユニクロやGUなど低価格のファストファッションの台頭で業績が低迷。この3年間の売上高を見ても、2014年2月期の99億円から2016年には93億円にまで減少。最終利益は2009年から連続赤字となっており、2011年には30億円近い赤字を計上し、今期も第3四半期までに7億円近い純損失を計上するなど極度の不振に喘いでいるのです。

 果たして、なぜ全国にパーソナルジムを展開するRIZAPが衣料販売という関連が薄そうな、しかも業績不振のジーンズメイトを買収することを決定したのでしょうか?

 その背景を掘り下げていくことにしましょう。

 

RIZAPグループとはどのような企業なのか?

 今でこそ、必ず目標を達成するというストイックなダイエットで有名なRIZAPですが、もともとは健康食品の販売会社からスタートしています。

 明治大学の学生だったRIZAPグループ創業者の瀬戸健氏は、24歳の時に大学を中退して2003年4月に健康食品を扱う健康コーポレーションを設立。当初は、大豆の胚芽部分を濃縮したサプリメントを販売しますが、この主力商品が全く売れずに窮地に陥ります。

 ところが、予期せぬところから大きなビジネスチャンスの糸口が見つかります。

 サプリメントのおまけに付けていた『おからのクッキー』が、非常に評判がよかったのです。そこで、このクッキーを商品化しようと、瀬戸氏の実家で営んでいたパン屋で豆乳とおからのクッキーを焼いてもらい販売することにしたのです。とはいえ、このクッキーだけでは事業として成り立たせることは難しく、依然として慢性的な赤字から脱出することは難しい状況でした。

 事態を一変させたのは、お客さまからの「クッキーを食事の代わりに食べている」というひとこと。この言葉をヒントに、瀬戸氏はクッキーでダイエットができるのではないかと考え、ビタミンをさらに加えて、新たなクッキーを完成させます。これを『クッキーダイエット』として売り出したところ、人気が爆発します。売り上げは初年度2,400万円でしたが、2005年には9億円、2006年には24億円、そして2007年には107億円という驚異的な伸びを記録し、2006年5月には札幌証券取引所アンビシャスに上場を果たすまでになるのです。

 ところが、“我が世の春”もそう長くは続きませんでした。『クッキーダイエット』が大流行すると類似品が市場に溢れ、思うように売り上げが伸びなくなってしまったのです。瀬戸氏は、競争が激化した市場で差別化を図ろうと積極的に広告宣伝を展開し、2008年には157億円の売り上げを記録するも、予想通りには売り上げが上がらず、200トンものクッキーの在庫の山を廃棄して、4億円の最終赤字に転落。2009年には1億円の最終利益を確保するも、売り上げは70億円と前年から半減するという窮地に追い込まれます。

 当時、健康コーポレーションは銀行におよそ30億円の借入があり、急激な業績不振によって銀行は手の平を返したように融資の返済を迫ったことで、またしても会社は倒産の危機に直面することになるのです。

 この危機を切り抜けることができたのは、創業者の瀬戸氏が『クッキーダイエット』のみでは将来的に不安があると判断し、成長の過程で買収していた会社が販売する美容器具のヒットでした。

 当時、瀬戸氏は美顔器の市場に注目。女性の美に関して、化粧品市場は2兆3千億円と巨大なマーケットがあるのに、美顔器は… 続きを読む

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安部 徹也

安部 徹也

株式会社 MBA Solution 代表取締役

株式会社 MBA Solution 代表取締役。2001年MBAを取得後、経営コンサルティングの事業で起業。近著に『最強の「イノベーション理論」集中講義』 (日本実業出版社)や『ぐるっとマーケティング』(すばる舎リンケージ)などがある。

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