経営者が知っておきたいビジネス理論入門(第73回)

カルビーが成型ポテトチップス市場に参入した理由

2016.10.31 Mon連載バックナンバー

“無風”状態から風雲急を告げる成型ポテトチップス市場

 10月中旬、東京都内のとあるスーパー。入り口付近の特売コーナーに目立つように新製品が並べられていました。

 それが、『ポテトチップスクリスプ うすしお味/コンソメパンチ』。

 スナック菓子マーケットで50%のマーケットシェアを誇るカルビーが次の“戦場”として成型ポテトチップス市場に照準を定め、今やポテトチップスでは定番となっているうすしお味とコンソメパンチの2種類を投入し、スタートダッシュとばかりに大々的なプロモーションを仕掛けてきたのです。

 成型ポテトチップスは、ヤマザキビスケットの『チップスター』と日本ケロッグの『プリングルズ』が市場を寡占し、ここ最近は年間200億円程度と“無風”といっても過言ではない状態が続いていました。

 ここにポテトチップスだけで、年間800億円近い売り上げを叩き出し、マーケットシェアは73%を超えて圧倒的な知名度を誇るカルビーが殴り込みをかけてきたというわけです。

 このカルビーの参入により、ここ数年で成型ポテトチップス市場は大きな変化の波にさらされることは想像に難くないでしょう。

 

急拡大路線をひた走るカルビー

 成型ポテトチップス市場に満を持して参入したカルビーですが、2009年6月にジョンソン・エンド・ジョンソンから松本晃氏を代表に迎えて以降、急速な拡大路線をひた走ってきました。

 たとえば、2010年3月期には1,465億円だった売り上げは、2016年3月期には2,461億円まで成長。ここ6年で68%増という驚異的な伸びを記録したことになります。また、営業利益に至っては、2010年3月期の95億円から2016年3月期の281億円まで実に3倍近い水準を達成しています。

 この業績の急拡大を支えてきたのが、従来の市場の掘り起こしと新たな市場への参入です。

 従来の市場の掘り起こしで大きな成功を収めたのが、シリアル食品である『フルグラ』。

 『フルグラ』は、もともと1988年に発売され、長い間売り上げは低空飛行を続けていましたが、新たに代表に就任した松本氏が『フルグラ』を試食した際に、他社製品にない香ばしさや食感が日本人にも受け入れられると直感し、大々的に売り出すことを決断。

 2009年当時は、日本のシリアル市場はわずか250億円程度でしたが、積極的なマーケティング戦略が功を奏して『フルグラ』は日本の食卓に浸透し、2016年3月期には遂に年間売り上げが200億円を超えるカルビーの一つの柱にまで成長させることに成功したのです。

 そして、今回は新たな市場へ参入し、さらに売り上げを拡大すべく『チップスター』や『プリングルス』が寡占する成型ポテトチップス市場に照準を定めてきたのです。

 

なぜ、カルビーは成型ポテトチップス市場に照準を定めたのか?

 さて、それでは、なぜカルビーは成型ポテトチップス市場に参入することを決定したのでしょうか?

 その戦略的背景を探っていくことにしましょう。

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安部 徹也

株式会社 MBA Solution 代表取締役

株式会社 MBA Solution 代表取締役。2001年MBAを取得後、経営コンサルティングの事業で起業。近著に『最強の「イノベーション理論」集中講義』 (日本実業出版社)や『ぐるっとマーケティング』(すばる舎リンケージ)などがある。

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