経営者が知っておきたいビジネス理論入門(第60回)

なぜ、吉野家は豚丼を復活させたのか?

2016.04.21 Thu連載バックナンバー

4年振りに復活した豚丼と明らかになった吉野家の苦戦

 吉野家は、4月6日、4年振りに豚丼を復活させました。価格は2011年12月に販売終了した時と同じ330円。4月12日まではメニュー復活を記念して300円のキャンペーンを展開すると、復活を待ちわびていた顧客が殺到し、お昼時の店内は多くのお客さまでごった返すなどの大盛況でした。

 ただ、そんな豚丼の復活で賑わう店内と対照的に4月11日に発表された吉野家ホールディングスの決算は厳しいものとなりました。

 2016年2月期の連結売上は1,857億円と3.2%増加したものの、本業の儲けを表す営業利益は前期比54.1%減少して16億円までの落ち込みを記録したのです。特に深刻なのは顧客離れで、2014年4月以降、既存店の顧客数が前年同月を上回ったのはわずか2月のみ。2014年に2度にわたる牛丼の値上げで、顧客の足が遠のいてしまったのです。

 それでは、ここで吉野家の牛丼価格の変遷を、アメリカのBSE(狂牛病)騒動後に復活して以降、簡単に振り返っていきましょう。

 吉野家はBSE騒動が落ち着きを見せた2006年9月、2年7ヶ月ぶりに380円で牛丼の販売を再開することを決定。その後、“牛丼御三家”と呼ばれるすき家松屋との価格戦争が激化していきます。吉野家は、期間限定で300円などキャンペーンを展開して、激しい顧客の奪い合いを繰り広げていましたが、2013年4月には定価を280円に値下げして、低価格競争は最終段階を迎えます。

 2014年4月に消費税が増税された際には、すき家が税込で270円と10円値下げしたのに対して、吉野家は逆に20円値上げして300円とし、これまでの低価格競争とは一線を画す戦略に打って出ます。さらに2014年12月には原材料のアメリカ産牛肉の仕入れ値が過去に類を見ないほど高騰しているという理由で、一気に80円値上げして2006年に牛丼が復活した時と同じ380円にまで価格を戻します。

 ただ、このわずか1年以内に2回もの値上げに走った価格改定に対して理解が得られずに、顧客離れにつながってしまったのです。

 

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安部 徹也

安部 徹也

株式会社 MBA Solution 代表取締役

株式会社 MBA Solution 代表取締役。2001年MBAを取得後、経営コンサルティングの事業で起業。近著に『最強の「イノベーション理論」集中講義』 (日本実業出版社)や『ぐるっとマーケティング』(すばる舎リンケージ)などがある。

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