弁護士が語る、トラブル解決の方法

裁判なしでトラブルを解決する「ADR」とは?

2017.11.29 Wed連載バックナンバー

 現代社会では、誰もがさまざまなトラブルに巻き込まれる可能性があります。消費者と事業者との間のトラブル、事業者間での取引上のトラブル、労使紛争、ご近所トラブルなど、枚挙に暇がありません。

 一旦トラブルに発展すると、当事者同士で話し合って解決することは困難です。解決の手段として訴訟を起こす方法もありますが、判決まで長い時間がかかることや証拠に乏しいことなどがネックとなり、泣き寝入りしてしまう人もいるでしょう。

 しかし、裁判手続を経ることなく、法的にトラブルを解決する手段があります。それが「ADR」です。

 

「時間と労力がかかりすぎる」訴訟の問題点を解消できないか?

 トラブルが発生した際、法的な解決手段として最もよく知られているものが訴訟だと思います。訴訟においては、当事者の主張、立証に対し、判決という形で裁判所の判断が下されます(なお、裁判所・裁判官の判断として、判決のほかに決定や命令というものがあります。裁判というのは、判決、決定、命令の総称です)。

 判決が確定すると、判決の時点までに生じた権利関係は原則として再び争えなくなります(既判力)。この既判力によって、紛争の蒸し返しを防止することができます。また、判決が確定すれば、財産などを差し押さえる強制執行手続によって権利の実現が図れます。即ち、確定判決には紛争を終局的に解決する強い効力が認められています。

 しかし、確定判決に強い効力が認められることから、裁判所は当事者双方に十分な主張の機会を与え、証拠に基づいて慎重に事実認定をします。つまり、時間がかかります。訴えの提起から第1回期日(法廷で弁論を行うこと)までに1カ月半程度、その後も1カ月~1カ月半程度の間隔で期日が入るということが一般的です。そのため、大して話が進まないまま半年経ってしまった、ということも珍しくありません。

 また、証拠に基づいて事実を認定するということは、裏を返せば、証拠がないと明白な事実さえ認定してもらえないということになります。「まさか揉めるとは思っていなかったので何の書面も残していない」というケースも多く見られます。そのような場合、訴訟に向けて関係のありそうな資料を一から見直すことになり、それだけでもかなりの時間と労力が必要となります。

 こうした訴訟の欠点を補い、気軽に利用できる紛争解決の手段として生まれたのが、「ADR」です。

 

第三者を交えて柔軟な解決を促す

 ADRとは、Alternative(代替的)Dispute(紛争)Resolution(解決)の頭文字を取ったものです。裁判の代替手段ということで、日本では「裁判外紛争解決手続」と呼ばれています。

 訴訟とは違い、ADRの実施機関は裁判所に限られません。行政機関や民間機関でも実施しています。日本弁護士連合会も2001年9月に「ADRセンター」を立ち上げ、ADRを推進してきました。

 ADRの中には、あっせん、調停、仲裁などの手続があります。それぞれについて、以下に簡単に紹介します。… 続きを読む

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久保田 聡

久保田 聡

弁護士

「明日の風法律事務所(http://asunokaze-law.com/)」代表。久保田まち子弁護士とともに「オーダーメイドの法的サービス」を掲げ、各種契約上のトラブル、建築紛争、労働、相続、離婚、成年後見などの民事事件から顧問業務、刑事・少年事件に至るまで、あらゆる分野に対応する。成蹊大学法学部、同法科大学院非常勤講師などの肩書も併せ持ち、活動は多岐にわたる。(編集:株式会社ネクストアド)

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