未来を背負う若手棋士の才能の磨き方

AIだけじゃない、藤井聡太四段の強さの理由

2017.08.27 Sun連載バックナンバー

 2017年6月26日、将棋の藤井聡太四段が、デビュー後負け無しの公式戦29連勝を達成した。これは、神谷広志八段が約30年間保持していた28連勝を抜く大記録である。記録は止まったものの、6~7月は藤井四段のニュースでもちきりだった。

 藤井四段の強さのひとつとして「寄せの早さ」がよく挙げられる。寄せとは対局終盤において相手を追い込む手筋のこと。羽生善治三冠は藤井四段の寄せを「谷川浩司九段の『光速の寄せ』を彷彿とさせる」と評している。

 藤井四段は10代半ばという若さで、いかにしてその強さを手にしたのだろうか。

 

「あり得ない指し方」が勝利につながる

 藤井四段の強さのひとつに、定跡にとらわれず「最善最速の道筋」を追求する点にある。29戦目に対戦した増田康宏四段も「(藤井四段は)迷わずに最善と思う手を高速で完璧に打ってきている印象。ミスを許さないコンピューターの指しに近い」と表現している。

 その証拠に、藤井四段では一般的な将棋ではあり得ない指し方をすることがよくある。たとえば羽生三冠との対戦(非公式戦)で、藤井四段は序盤の27手目にもかかわらず、桂馬を前線に出す「4五桂」という手を選ぶ。序盤で桂馬を積極的に動かすことは、形勢が不利になるリスクが高く、通常は使わない手である。

 羽生三冠はその桂馬をあっさりと手にするが、その桂馬がうまく活されることはなく、藤井四段の寄せの前に敗れている。

 藤井四段の“奇妙な”指し方の例としてはもう1つ、7月11日に行われた、加古川青流戦トーナメントにおける都成竜馬四段との対局で見られる。序盤は都成四段の中飛車(飛車を盤面中央に据える戦法)に対し、藤井四段は居飛車(飛車を初期状態と同じく右側に据える戦法)で応じる。やがて都成四段が優勢となり、藤井四段に猛烈な寄せを見せる。

 そして79手目、都成四段は、3段目まで逃げてきた藤井四段の玉将の前に、金を打つ。ここで80手目に藤井四段が打った手は、… 続きを読む

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櫻庭由紀子

櫻庭由紀子

株式会社ネクストアド所属ライター。経営者のヒューマンドキュメンタリーや企業の経営戦略、伝統工芸や製造業の職人の取材記事を中心に執筆。その他、江戸時代の時代考証や落語・歌舞伎の伝統芸能についての執筆も行う。

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