日本史、伝説を生んだカリスマの魅力(第3回)

光源氏:あらゆる力を手にした貴公子が抱く苦悩とは

2017.09.28 Thu連載バックナンバー

 誰もが知る歴史的人物のなかには、伝説に彩られ、謎に満ちた生涯を送った者も少なくない。この連載では、実在すら疑われる一方で、今もなお人々に愛されるカリスマたちの実像に迫る。第3回は、華々しい恋愛遍歴を繰り広げ、権力をほしいままにした『源氏物語』の主人公、光源氏を紹介する。

 源氏物語に描かれた光源氏と聞いて、多くの人が、美しい女性を次々に射止めていった美男子を思い浮かべるだろう。作中でも、光源氏は「この世のものとは思えない」光り輝く容姿を備えていた、と描かれている。女性なら誰もが恋い焦がれ、なかには人妻や年老いた尼さえも光源氏の虜になった。

 もちろん光源氏は、あくまでも長編小説の主人公でしかなく、架空の人物である。しかし、作者である紫式部は、実存の人物をモデルに人物像を作り上げたとも考えられ、完全に架空の人物であるとは言い切れない。

 

モデルになったのは藤原道長? 菅原道真? 在原業平?

 たとえば、華々しい出世を遂げたという意味では、「摂関政治」で知られる藤原道長も、モデルの1人と考えられる。文学をこよなく愛した道長は、紫式部を庇護し、源氏物語を執筆するために、当時はまだ高価だった紙や硯を惜しみなく与えたといわれている。さらに、紫式部は一条天皇の中宮(夫人)だった彰子に仕えていたが、これも彰子の父である道長の推挙があったからだ。

 道長は、4人の兄が亡くなると、自身の娘を3人も天皇に嫁がせるなどで瞬く間に出世を重ね、孫である後一条天皇が即位すると、思いのままの権勢を振るった。道長が「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思えば」と詠んだのは有名だが、これは「この世は私のためにあるようなものだ。満月のように足りないものはない」という意味で、権力の絶頂にある道長の心情を詠んだもの。天皇に準ずる地位である准太上天皇に出世し、関係した女性を自邸に住まわせるなど、我が世の春を謳歌した光源氏の人生に似ていなくもない。

 一方で、光源氏が学問に秀でていたという点で見てみると、… 続きを読む

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小野 雅彦

小野 雅彦

フリーライター

歴史時代作家クラブ会員。雑誌やムックなど、戦国時代や幕末などの日本史にまつわる記事を中心に執筆。地方に埋もれた歴史や人、事件などについて取材を続けるほか、東日本大震災以降は原発関連の記事なども手掛けている。著書に『なぜ家康の家臣団は最強組織になったのか 徳川幕府に学ぶ絶対勝てる組織論』(竹書房新書)がある。秋田県秋田市出身。

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