大人のエンタメ小説! ~話題の本を読む~(第2回)

会社が隠し続けた秘密とは?池井戸潤『七つの会議』

2016.05.23 Mon連載バックナンバー

 池井戸潤著『七つの会議』(集英社文庫)は、中堅メーカーを舞台にした企業小説だ。文庫の帯に「クライム・ノベル(犯罪小説)」とあるように、組織の舞台裏が徐々に明かされる。

 実直がとりえの営業部課長、自己正当化に長けた経理マン、社内政治をし尽くしていまは窓際のカスタマー室長など、「うちの会社でもあるある」「うちの部署にもいるいる」、と思わされるエピソードを読むうちに、いつのまにか社内の「秘密」に近づいていく。

 『七つの会議』がどのような小説か、「構成」と「キャラクター」の2つの側面からみてみよう。

 

ミステリーの手法を駆使し、視点を替えながら「秘密」に迫る

 著者の池井戸潤は、第44回江戸川乱歩賞を受けて1998年にデビューした作家だ。2013年にテレビドラマ化されて大ヒットした「半沢直樹シリーズ」では銀行を、直木賞受賞作『下町ロケット』は中小企業を舞台にしており、経済小説の書き手として知られる。

 しかし『七つの会議』は、ミステリーの手法が駆使されたクライム・ノベルだ。

 物語の舞台は、大手総合電機メーカー「ソニック」の子会社で、中堅メーカーの「東京建電」である。社内トップの営業成績を誇り、最年少で課長に昇格した38歳の営業一課長・坂戸宣彦が、毎週木曜日に開かれる営業部の定例会議で好成績を報告してまもなく、50歳の部下、八角民夫からパワハラで訴えられ、まさかの更迭となる。後任として一課長にくり上がった45歳の原島万二は、喜びよりも違和感を覚え、八角に事情を問いただして衝撃を受ける。東京建電には、公にできない「舞台裏」があったのだ――。

 八角はなぜパワハラを訴え、営業部長の北川と役員会は、なぜ、更迭を承認したのか?「舞台裏」が秘められたまま、環境会議、計数会議などさまざまな「会議」とからめつつ、物語は進む。1話ごとに視点人物が異なる短編を連ね、計8話で長編を形づくる構成にしているのが、『七つの会議』の大きなポイントだ。

 「第一話 居眠り八角」の視点人物は、前述の原島である。担当する家電の業績が不調で、定例会議が苦痛でたまらなかった彼が配置… 続きを読む

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天木 晶

天木 晶

フリーライター

長年のエンタメ分野取材経験をもとに、多ジャンルで活躍。主なフィールドは本と映画。折々のスポーツ観戦。

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