旅する「真田丸」~真田一族の聖地巡礼(第11回)

白石・蔵王/真田幸村の“その後”を伝える地を巡る

2016.12.26 Mon連載バックナンバー

 12月18日の放映で大団円を迎えた大河ドラマ「真田丸」。大坂夏の陣で敵大将・徳川家康の首を狙い、それを果たせずに戦場に散る真田幸村(信繁)の姿は、しばしば「滅びの美学」の文脈で語られがちだが、本作の幸村は勝利をあきらめずに最後まで戦い続ける姿が印象的だった。

 「真田丸」は年間を通して、「家族・仲間が手を携えて乱世を生き抜く」という点を大きなテーマとしていた。そのことは、敗戦間近にもかかわらず幸村が淀殿に、「望みを捨てなかった者にのみ道は開けるのです」と説得した言葉にも象徴される。本作では堺雅人演じる幸村の、生への渇望とでもいえるようなしぶとさや泥臭さが大きな共感を得た。だからこそ、最終回終了後、「真田丸ロス」を嘆く声が鳴り止まないのだろう。

 「生き抜く」という本作テーマを物語るエピソードとして、ドラマ内では松岡茉優演じる正妻の春や、娘の梅らを大坂城外へ逃がすシーンが描かれた(第49回「前夜」)。決戦を翌日に控え、大坂の陣では戦火を交えた伊達政宗を頼って、家族らを落ちのびさせたのである。ドラマでは語られなかったが、政宗にかくまわれた幸村の一族はその後仙台藩にわたり、幕末まで伊達家家臣として仕え、現在でも血脈を保っている。

 ドラマとともに最終回を迎える本連載の最後は、幸村の子孫が生き抜いた白石・蔵王と、幸村の伝説地を巡りたい。

 

「真田」を守り続けた片倉家の心意気【白石 当信寺・傑山寺・清林寺】

 ドラマでは、正妻の春(竹林院)と娘の梅(阿梅)が寄り添うように政宗の陣中に落ちのびていったが、史実では阿梅や幸村の次男・大八を含む、5人(または6人)の子女が政宗の重臣・片倉重綱に引き取られた。竹林院は大坂の陣後、剃髪して京都で暮らしたといわれている。

 引き取られた幸村の子らはまだ幼く、片倉重綱が治める白石(宮城県南部、現在の白石市)の地で養育された。重綱は智勇に優れ、またたいへん義理堅い人だったようで、敗将の子であった大八を家臣として取り上げ、さらに阿梅を自分の後妻に迎えたのだ。しかし、徳川家に弓引いた幸村の息子を取り立てたとなると、幕府からにらまれてしまう。そこで、大八には片倉の姓を与えて、片倉守信と名乗らせた。

 重綱に嫁いだ阿梅が父・幸村の菩提を弔うために建立したのが、白石城の城下にある当信寺だ。当信寺は阿梅と守信の菩提寺でもあり、本堂の裏手には阿梅と守信の墓碑が寄り添うように建っている。大坂夏の陣の戦火を逃れ、異国の地で手を携えて歩んできた姉弟の絆を見るかのようだ。ちなみに、阿梅の墓石は頬杖をついた観音をかたどったものだが、虫歯を抑えているようにも見えるため、地元では「虫歯封じ」の仏様として信仰を受けている。

 阿梅は当信寺とは別に、傑山寺の末寺として月心院を建立し、そこでも父・幸村を弔った。傑山寺は、重綱の父で「小十郎」の名で知られる片倉景綱が建立した片倉家の菩提寺でもあり、片倉家歴代の墓所に加え、景綱の銅像が建てられている。月心院が廃寺となると、幸村の位牌は傑山寺に移された。つまり、傑山寺は大坂夏の陣で敵味方となった重綱と幸村、両者の位牌を祀っていることになる。

 白石にはまた、幸村の九女(六女とも)であった阿菖蒲の墓や、かつて幸村に仕えた家臣・三井景国の菩提寺である清林寺が残る。阿菖蒲は成人後に片倉定広に嫁ぐ。片倉定広は元々東北の名門・田村家の末裔で、田村家が豊臣秀吉によって滅ぼされたのち、片倉の姓を賜り片倉家に養われていた。定広と阿菖蒲はどちらも生家を失い、片倉家の庇護を受けていた者同士だったのだ。また、三井景国は阿梅や守信が白石に移り住んだのを知って後を追うように白石の地を訪れ、片倉家の家臣になった。どちらの史跡も、片倉家の懐の広さに感じ入ることができる場所といえるだろう。

 

幕末にも受け継がれた真田の六文銭【蔵王】

 成人して大八から名乗りをかえた片倉守信は、伊達家直属の家臣として白石に隣接する現在の蔵王(現在の蔵王町)に領地を与えられた。そして、守信の子の代から「真田」に復姓するのだが、そこでも徳川の追及を逃れるための手立てを欠かさなかった。片倉重綱は政宗を継いだ藩主・伊達忠宗と相談し、大八は7歳のときに… 続きを読む

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かみゆ歴史編集部

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歴史コンテンツメーカー

歴史関連の書籍や雑誌、デジタル媒体の編集制作を行う。ジャンルは日本史・世界史全般、アート、日本文化、宗教・神話、観光ガイドなど。おもな編集制作物に『日本の山城100名城』(洋泉社)、『一度は行きたい日本の美城』(学研)、『戦国合戦パノラマ図鑑』(ポプラ社)、『系図でたどる日本の名家・名門』(宝島社)、『大江戸今昔マップ』(KADOKAWA)、『国分寺を歩く』(イカロス出版)など多数。お城イベントプロジェクト「城フェス」の企画・運営、アプリ「戦国武将占い」の企画・開発なども行う。公式サイトはwww.camiyu.jp

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