今宵行きたい、名物女将のもてなす店(第12回)

【代々木上原】夏の疲れを癒す三代目女主人の肴と酒

2016.07.29 Fri連載バックナンバー

鮮魚店を受け継ぎ、居酒屋へ

 元は鮮魚店、そして居酒屋に業態を変えた店。そのような店の魚がおいしくないわけがない。今回の女将は80年以上続く鮮魚店の三代目、居酒屋「さかな幸(こう)」を切り盛りする大久保理江さんだ。

 小田急線代々木上原駅から徒歩2~3分ほどの場所に、小体な居酒屋がある。紺色の「さかな幸」の日よけ幕が目印だ。その横ののれんをくぐると、ゆったりとしたカウンターが奥まで続いている。

 女主人の大久保さんが居酒屋を始めたのは1999年、今年の秋で17周年を迎える。魚の取り扱いを、先代である父からさぞかし厳しく仕込まれたかと思いきや、意外とやさしかったとのこと。とはいえ、手取り足取り教わったわけではない。

 「父が捌いているのをとにかく見て覚えました。斜め後ろからじーっと。ほかに言われたのは『とにかく数をこなせ』と。とにかく見て、自分でも捌く、この繰り返しでした」

 開店当初は、鮮魚店と居酒屋と半々で営業していたが、今は大久保さんの営む居酒屋専業に。店で扱う魚は築地のほか、徳島県・鳴門の漁師などから直接し入れることが多いという。

 

開店から、無濾過生原酒ひとすじ

 開店当初から、魚の質はもちろんだが、無濾過生原酒の日本酒を出すことにもこだわっている。

 店には瓶ビールもあるが、あえて「最初の一杯はこちらをどうぞ」と出されたのは、奈良県・油長(ゆちょう)酒造の「風の森 ALPHA TYPE 1」。

 「アルコール度数が低めで、甘くてさわやかな、キャンディのような香りがあるんです」と言われ口にすると、思いがけずスッキリした味。これなら一杯目にぴったりだ。

 無濾過の日本酒は今や多くの店でも見られるようになったが、「さかな幸」が開店した当初は、希少な酒だった。

 「開店に当たって、魚に合うのはやはり日本酒だと改めて勉強を始めたのですが、なかなか手に入らなくて。お店を紹介していただいたり、小さな蔵を訪ねたりして揃えていったんです」とのこと。

 日本酒は常時15種ほど。1杯600円~1,000円程度だ。旨みが強い、しっかりとした風味のものを集めているという。メニューを見ると、酒造は、香川県、岐阜県、島根県、京都府など。

 「個性的だけれども料理に合う酒をと思って仕入れると、自然と西の方面のお酒が自然と揃ってきたんです」

 

日本酒との相乗効果を生む料理… 続きを読む

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松岡 芙佐江

松岡 芙佐江

フードライター

フードライター歴12年。グルメ雑誌編集部勤務を経て独立し、フリーランスに。居酒屋からフレンチ、イタリアンまで、店舗紹介記事や食べ歩きルポを執筆。企業誌で、スイーツのレシピ記事なども担当している。

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