時間を忘れるほど楽しめる!ミステリー小説ガイド(第2回)

嘘まみれの真実を炙り出す爽快感「ソロモンの偽証」

2015.05.26 Tue連載バックナンバー

 映画化もされ話題となっている宮部みゆきの小説「ソロモンの偽証」(新潮社)。本作は記録的な大雪が降ったクリスマスの未明、1人の中学生が学校の屋上から転落死したことからはじまる。彼の死は自殺か、他殺か? 他殺だとしたら犯人は? 単行本3巻に渡る壮大なスケールで、一つの事件の真相を巡り、事件を取り巻く人々の心が丁寧に描かれる。一気読みしたくなる長編小説「ソロモンの偽証」の魅力を紹介しよう。

 

同級生の死は自殺か? 他殺か?

 まずは簡単なあらすじを紹介しよう。

 記録的な大雪が降ったクリスマスの朝、学校の屋上から転落死した城東第三中学校3年柏木卓也。はじめは学校、家族、警察によって自殺と判断された彼の死。しかし、彼が同級生によって殺されたのを目撃したという三通の告発状が送られる。一通は警察官の父を持つ主人公宛てに、一通は校長宛てに、そして最後の一通は柏木の担任 森内恵美子宛てに送られた。

 この告発状により、事件を取り巻く環境は一変する。一旦は自殺として処理されかけた事件が再び掘り返される。マスコミ報道も次第に過熱し、互いの疑惑は深まることに。これをきっかけに周囲の人間関係は崩れはじめ、物語は巻き起こる新たな事件へと展開してゆく。

 この件は、本当に自殺なのだろうか。本当に同級生が彼を殺したのだろうか。彼の死後に起こる事件は何が原因なのだろうか。全ての事件の発端は柏木卓也の自殺だ。彼の自殺の真実さえ判明すれば、この学校で起こる事件の全ての真実が見えてくるのではないだろうか。主人公と生徒たちは、真実を暴くため学校も保護者も反対するなかで、校内裁判を起こそうと計画する。

 

学校を巻き込んだ事件は現実でもしばしば

 学校で起こる事件は現実世界でもよくある。いじめを苦に自殺する生徒、教師の不祥事、生徒同士のトラブル、あげればキリがないほどだ。本作における柏木の死も、“よくあるトラブル”の一つとして片づけられようとしていた。たとえば、「柏木は学校で同級生たちとトラブルを起こし、その後、不登校になっていた」「柏木は人間関係に悩んで自殺した」といった類の解釈だ。そうやって簡単に処理してしまうことが、学校や保護者にとって波風をたてない一番の解決策であった。しかし、本当にそれでいいのか、と訴えたのが告発状である。この告発状がなければ、事件は自殺として処理されてしまったであろう。

 私たちが現実テレビや新聞で目にする学校に関するトラブル。それは学校が開く記者会見であったり、警察の発表であったり、生徒や保護者へのインタビューであったり、さまざまだ。

 しかし、本作を読むと… 続きを読む

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舟崎 泉美/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

舟崎 泉美/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

小説家、ライター

富山県出身、東京都在住。小説、脚本、ゲームシナリオ執筆。ライターとして雑誌、WEB、企業誌などにも記事を書いている。第一回本にしたい大賞受賞。著書「ほんとうはいないかもしれない彼女へ」(学研パブリッシング)。公式ホームページ http://izumishiori.web.fc2.com/

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