時間を忘れるほど楽しめる!ミステリー小説ガイド(第1回)

現代人の“正義”が問われる「ようこそ、我が家へ」

2015.05.21 Thu連載バックナンバー

 月9でもドラマが放送され、話題の小説「ようこそ、我が家へ」(小学館)。著者はあの「半沢直樹」原作者でもある池井戸潤だ。本作は真面目なだけが取り柄のサラリーマン、倉田太一が、駅のホームで割り込みした男性を注意したことからはじまる。その日を境に平穏だった倉田家が嫌がらせを受けることとなる。花壇の踏み荒らし、郵便ポストに入れられた瀕死の猫、家の中では盗聴器が発見される。しかし、この物語は単なるフィクションでは片付けられない恐怖がある。

 

小さな正義感は、大きなトラブルのもと

 不思議とトラブルが重なる時期がある。その発端というものは、この小説のようなほんの些細なことから起こるのかもしれない。

 毎朝毎晩の通勤時、駅のホームでの割り込みは、職場に電車通勤をするビジネスマンなら誰しもが経験するちょっとしたトラブルだ。面倒に巻き込まれるのを恐れて、見て見ぬふりをしてやり過ごすのが普通だろう。

 「ようこそ、我が家へ」の主人公である50代の銀行員、倉田太一はその日、我慢が出来ずについ声をかけてしまった。若い女性が男に押されてよろける姿を見て、まるで自分の娘が危ない目に遭っているような感覚に陥り、小さな正義感が芽生えたのだった。注目の的となり、恥をかかされた男に逆恨みされた倉田は、家の近辺まで跡をつけられる恐怖体験に遭う。

 その翌朝から始まった嫌がらせは執拗で、想像を絶するものだった。倉田家ではこのストーカー男を、名前のわからない“名無しさん”と呼ぶようになり、家族揃って犯人を捕まえようとする。

 

不幸は連鎖する性質を持っている? 

 この物語の魅力は、次々と襲いかかかるトラブルに対して、倉田がどのような生き様を見せるかという点に集約される。… 続きを読む

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舟崎 泉美/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

舟崎 泉美/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

小説家、ライター

富山県出身、東京都在住。小説、脚本、ゲームシナリオ執筆。ライターとして雑誌、WEB、企業誌などにも記事を書いている。第一回本にしたい大賞受賞。著書「ほんとうはいないかもしれない彼女へ」(学研パブリッシング)。公式ホームページ http://izumishiori.web.fc2.com/

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