伝説の日本刀~知られざる名刀ヒストリー(第4回)

その切れ味に鬼も権力者たちも恐れた「童子切安綱」

2015.05.27 Wed連載バックナンバー

 現在日本には、国宝に指定されている刀剣だけでも約100振り、重要文化財指定のものは約600振りと、数多くの名刀が現存している。そのなかでも各段に美しく、名刀のなかの名刀とされる五振りを「天下五剣」と呼ぶ。いつ頃からこの五振が選ばれるようになったのか定かではないが、室町時代にはひとくくりにされるようになり、明治以降に「天下五剣」の名が広まった。

 平安時代の名工・三条宗近の「三日月宗近(みかづきむねちか)」、鎌倉幕府初代執権・北条時政を守った「鬼丸國綱(おにまるくにつな)」、日蓮宗開祖・日蓮の破邪の太刀「数珠丸恒次(じゅずまるつねつぐ)」、前田利家に授けられた名刀「大典太光世(おおでんたみつよ)」、そして今回ご紹介する「童子切安綱(どうじぎりやすつな)」である。

 

大原安綱の傑作にして“生”の姿を残す名刀

 童子切安綱の作者は大原安綱(おおはらやすつな)という平安時代の名工だ。伯耆(ほうき、現在の鳥取県中部)を中心に活動していた刀匠一派・大原一族のひとりで、茎(なかご、刀身の柄に収まる部分)に銘が切られている刀匠としては最古の部類に入る。

 安綱の作品は、いずれも名刀でありながら現存している点数が少ない。そのなかでも童子切は、大原安綱の最高傑作として名高く、また後世の手がほとんど加えられていない生(うぶ)の姿を保っているという、奇跡のような一振りなのだ。

 黒い地鉄(じがね、刀身の刃文が現れていない色の濃い部分)には板目肌(いためはだ、木の板のような模様)が浮かび、映りも鮮明。キラキラと光る金筋(きんすじ、地鉄に出てくる細い筋のような文様)が入り、指紋のような形の地斑(じふ)が出てくるのも見どころのひとつだ。

 平安時代の刀の特徴である腰反り(柄に近い部分に大きな反りがあること)が優美だが、同じく天下五剣のひとつである三日月宗近と比べると反りが強く、より実戦での戦いを視野に入れた造りとなっている。鋒(きっさき)はすっと細く延びているが、柄側は身幅が厚く、はっきりと浮き上がる刃文が力強い。

 まるで平安貴族の優美さと、勇ましい武将のようなふたつの側面を持つ童子切。この名刀の主にふさわしく、また「童子切」という名を冠するきっかけを与えたのが、貴族であり名将・源頼光(みなもとのよりみつ)である。

 

平安時代のゴーストバスター・源頼光の鬼退治

 源頼光は清和源氏(せいわげんじ)から数えて3代目にあたる。平安時代中期に藤原道長の側近として仕え、摂関家を支える貴族でありながら、数々の武勇を挙げた人物だった。

 頼光には渡辺綱(わたなべのつな)、坂田金時(さかたきんとき)、碓井貞光(うすいさだみつ)、卜部季武(うらべのすえたけ)という4人の家臣がおり、彼らは頼光四天王と呼ばれ、頼光とともに多くの逸話を残した武将たちだ。

0010881_550

 頼光と四天王は「平安時代のゴーストバスターズ」と言っても過言ではないほど、多くの妖怪退治に関わったとされている。なかでも有名なのは、… 続きを読む

全文(続き)を読む

続きを読むにはログインが必要です。

まだ会員でない方は、会員登録(無料)いただくと、続きが読めます。

かみゆ歴史編集部

かみゆ歴史編集部

歴史コンテンツメーカー

歴史関連の書籍や雑誌、デジタル媒体の編集制作を行う。ジャンルは日本史・世界史全般、アート、日本文化、宗教・神話、観光ガイドなど。おもな編集制作物に『日本の山城100名城』(洋泉社)、『一度は行きたい日本の美城』(学研)、『戦国合戦パノラマ図鑑』(ポプラ社)、『系図でたどる日本の名家・名門』(宝島社)、『大江戸今昔マップ』(KADOKAWA)、『国分寺を歩く』(イカロス出版)など多数。お城イベントプロジェクト「城フェス」の企画・運営、アプリ「戦国武将占い」の企画・開発なども行う。公式サイトはwww.camiyu.jp

このページの先頭へ
Bizコンパス公式Facebook Bizコンパス公式Twitter