春爛漫。京都、花の名所めぐり(第2回)

京都の春を優雅に彩る“枝垂れ”の名桜たち

2015.03.25 Wed連載バックナンバー

 京都には約300種類の桜が咲くといわれています。その中で柔らかい枝を長く下に垂らし花を咲かせる「枝垂桜(しだれざくら)」はひときわ優雅な桜として人気があります。今回はそんな枝垂桜の名所にご案内しましょう。

 

ぜひ見てみたい、京を代表する枝垂桜

 数ある京都の枝垂れの名桜の中でも特別な存在が、円山公園の「祇園枝垂桜」です。樹齢90年に近い老木で、日本の桜の中で一二を争う名桜といえます。陽が落ちると篝火に映えて夜空に浮かぶ姿は妖艶で、まるで花魁(おいらん)のような美しさ。毎年3月下旬~4月上旬頃に圧倒的な存在感で人々を魅了します。

 実はこの枝垂桜は2代目。初代は明治・大正・昭和と咲継ぎ、「円山の枝垂桜」として愛されていました。しかし昭和22年、樹齢200年で枯れてしまいます。そこで造園家で桜守(さくらもり、桜の手入れをする人)でもあった15代目佐野藤右衛門氏が、初代の種から丁重に育てた若木を移植したのが現在の「祇園枝垂桜」なのです。

 桜は、連作(同じ場所で繰り返し栽培する)に向かない木とされます。しかし、京都府の意向で同じ場所に植えられたために、2代目にはなかなか花がつきませんでした。そんな枝垂桜を藤右衛門氏は丹精を込めて世話をしました。大型台風に襲われた時は暴風雨の中、何時間も幹を抱いて桜を守ったといいます。その翌年、枝垂桜ははじめて花を咲かせると、その後段々と花の数を増やし、やがて日本を代表する名桜に成長しました。

 昨今、「祇園枝垂桜」は樹齢や環境問題などにより、その勢いにやや陰りが見えますが、佐野藤右衛門氏は親子2代にわたり我が子のように手厚く、変わらぬ愛情でこの桜の世話を続けています。このように、京都には数多の桜がありますが、どの桜にも植えた人の想いと物語が込められています。桜の美しさを愛でるだけでなく、そうした部分にも想いを馳せれば、なお一層の感動を得られるのではないでしょうか。

 

文豪が“紅の雲”と褒め称えた枝垂れ桜

 続いて注目したいのが、平安遷都1,100年の記念事業として創建された「平安神宮」。神苑には約200本の桜が花を競いますが、なかでも文化遺産「白虎楼」の緑色の瓦(碧瓦)を覆い尽くすように鮮やかに咲く「八重紅枝垂(やえべにしだれ)」は、絶対に見逃せない1本。

 八重紅枝垂は、谷崎潤一郎が小説『細雪』の中で「紅の雲」と表現した桜で、まるで天蓋のように空を覆い尽くす優雅な光景が、4月上旬頃から2週間ほど繰り広げられます。

 古代豪族・賀茂氏が創建した古社「上賀茂神社」も枝垂桜の名所です。その広い境内の中、清々しい芝生の広場に、子供でも手が届きそうなくらい花の枝が下りてくる2本の大きな枝垂桜が立っています。… 続きを読む

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高野 晃彰/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

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ベストフィールズ代表

大手アパレルで店舗開発を担当、その後、専門誌系出版社で企画編集を中心に勤務、退社後、編集プロダクション「ベストフィールズ」とデザインワークス「デザインスタジオタカノ」を立ち上げる。旅行・歴史・フード・ペット・マリンスポーツなどのエンタメ系から経済、ファッションまで幅広い分野での書籍・雑誌・ムック・商業制作物の執筆、編集、撮影、制作を行なっている。

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