歴史書店 三冊堂(第16回)

大河ドラマ『花燃ゆ』の主人公・杉文と3人の男たち

2014.12.31 Wed連載バックナンバー

 大河ドラマ『軍師官兵衛』が終焉を迎え、次の大河ドラマにも注目が集まる時期になってきました。2015年のNHK大河ドラマは『花燃ゆ』。気になる主人公は、幕末の長州藩に生まれた“杉文(すぎふみ)”という女性。主演は井上真央さんが務めます。

 とはいえ、これだけの情報では頭に「?」が浮かぶ人も多いかもしれません。歴史好きの人々の間でも、彼女の名前を知っている人は少ないという、正直マイナーな人物なのです。実際にどんな人物だったのか、彼女の人生は断片でしか残っていません。

 しかし、“吉田松陰の妹”という肩書きを知ると、少しイメージが違ってきます。しかも、松陰が主催した私塾・松下村塾には高杉晋作や久坂玄瑞、伊藤博文、桂小五郎など、名だたる人物が通っており、文も松下村塾で「女幹事」として彼らと交流を持っていたようです。

 今回はそんな文と、彼女と深く関わった3人の男性についてご紹介して行きましょう。

 

 まず、文が誕生したのは天保14年(1843)。のちに倒幕の中心を担う、長州藩の萩に生を受けました。歴史的には、この10年後に黒船来航という大事件が日本を襲い、幕末の動乱に突入するという過渡期です。生家の杉家は武士の階級にありながら貧しく、農業をしながら自給自足の日々を送っていました。しかし、貧しいながらも明るい我が家だったようで、3男3女の杉家の子どもたちはすくすくと成長して行きます。

 ここで登場するのが1人目の男性である13歳年上の兄・吉田松陰。松陰は幕末の思想家として現在も歴史にその名が刻まれている人物です。文と姓が違うのは、幼くして親戚の吉田家の養子となったため。しかし、すぐに吉田家の当主が死去したため、杉家に戻ってきました。

 松陰は神童として幼い頃からその天才ぶりを賞賛され、11歳で当時の藩主・毛利敬親に御前講義を行うほどの人物。おう盛な知的好奇心と真っ直ぐな性格の持ち主でした。が、過ぎたるはなんとやら。友情のために脱藩するという禁忌を犯すと、黒船に密航するという前代未聞の事件を起こし、はてや老中座主暗殺を計画し刑死するという、なかなか激しい人物だったのです。

 もちろん家族は松陰が何か騒動を起こす度に、右へ左へ大わらわ。文もその渦中にいました。しかし、杉家の人々は常に松陰を支え続けたのです。文も姉の寿(ひさ)とともに投獄されていた萩の野山獄を訪れ、差し入れをしたといいます。

 そんな松陰が出獄し、実家で謹慎しながら主催したのが松下村塾でした。獄中でも囚人たちに講義をするほど、生まれながらの教育者だった松陰。そんな松陰の噂を聞いた長州の若者たちは、こぞって松下村塾に集まります。ここで登場するのが、2人目の男性・久坂玄瑞です。… 続きを読む

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かみゆ歴史編集部

かみゆ歴史編集部

歴史コンテンツメーカー

歴史関連の書籍や雑誌、デジタル媒体の編集制作を行う。ジャンルは日本史・世界史全般、アート、日本文化、宗教・神話、観光ガイドなど。おもな編集制作物に『日本の山城100名城』(洋泉社)、『一度は行きたい日本の美城』(学研)、『戦国合戦パノラマ図鑑』(ポプラ社)、『系図でたどる日本の名家・名門』(宝島社)、『大江戸今昔マップ』(KADOKAWA)、『国分寺を歩く』(イカロス出版)など多数。お城イベントプロジェクト「城フェス」の企画・運営、アプリ「戦国武将占い」の企画・開発なども行う。公式サイトはwww.camiyu.jp

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