いつかは行きたい世界遺産ガイド(第10回)

人間が生きる根源「愛」と「美」を称える世界遺産

2014.11.13 Thu連載バックナンバー

 人と人の結び付きを「愛」と呼び、人と物との結び付きを「美」という。恋愛、親子愛、人類愛、芸術等々、多くの文化で愛と美は人間の活動の根源であり、もっとも大切なものであると考えられてきた。

 今回はそんな愛と美をテーマとする世界遺産を紹介する。

 

亡き妻に捧げた墓廟「タージマハル(インド)」

 17世紀初頭、ムガール帝国皇子フッラームは、アグラ城(世界遺産)で行われた宮廷バザールで美少女バーヌーと遭遇する。ふたりはその場で恋に落ち、15歳と12歳という若さで婚約し、5年後に結婚する。

 フッラームが皇帝位に即位すると、自らは「世界の王」シャー・ジャハーン、バーヌーは「選ばれし後宮の人」ムムターズ・マハルを名乗る。皇帝はインド中を飛び回って内政や外征に明け暮れたが、つねにムムターズを側に置き、他に妻を持つこともハーレムを築くこともなかったという。ところが14番目の子を出産するとムムターズは急逝してしまう。

 皇帝は深く悲しみ、妻の墓を収める廟の建設を開始。20年の歳月と2万人を投入してタージマハルを完成させる。『コーラン』が伝える審判の日に復活して妻と再会するために、タージマハルと対になる漆黒の廟を建てて橋で結ぶ計画だったという。

 この後、息子たちの間で凄惨な皇位継承戦争が勃発すると、皇帝位を継いだ三男アウラングゼーブによってアグラ城に幽閉され、窓から小さく見えるタージマハルを眺めながら息を引き取ったという。ふたりの棺はタージマハルの地下に寄り添うように並べられ、いまも復活の日を待っている。

 なお、インドのデリーにはタージマハルのモデルとなった世界遺産「デリーのフマユーン廟」がある。こちらはタージマハルと反対に、皇帝フマユーンの死を嘆き悲しんだ王妃が夫に捧げた廟だ。

 

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長谷川 大

長谷川 大

世界遺産&旅行ライター

横浜国立大学卒業後、出版社勤務。三国志・戦国時代・幕末・ギリシア神話など、歴史ものを中心に編集・ライティングを行う。世界一周の旅を経てフリーの編集者・ライターとして活動中。これまでの訪問国数は68か国、世界遺産は182か所。All About「世界遺産」公式ガイド。http://allabout.co.jp/gm/gt/563/

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