世界遺産が世界遺産である理由(第3回)

「危機遺産リスト」によって救われた世界遺産

2014.01.21 Tue連載バックナンバー

 世界遺産条約は、価値ある遺産を未来永劫守り伝えることを目的としている。しかし、なかには戦争や災害などに直面してその価値が危機に瀕することがある。

 世界遺産条約には、緊急に保護が必要な物件は「危機にさらされている世界遺産リスト(以下、危機遺産リスト)」に掲載して援助を行うことが記されている。

 今回は、一時危機遺産リストに掲載されたものの、その後の保護活動が実ってリストから無事削除されたふたつの世界遺産「ドゥブロヴニク旧市街」と「フィリピン・コルディリエラの棚田群」を切り口に、危機遺産の概要を解説する。

 

アドリア海の真珠・ドゥブロヴニク

アドリア海に抱かれた街並みが美しいドゥブロヴニク旧市街。
高さ25m、厚さ6mの城壁が約2kmにわたって旧市街を取り囲んでいる。

 真珠をはらむ貝のように、海と空に抱かれた美しい姿から「アドリア海の真珠」と謳われるクロアチアのドゥブロヴニク旧市街。海に突き出したこの土地はもともと小島だったが、7世紀にイタリア人がこの島に移り住み、街を建設した。

 街のモットーはリベルタス(自由)。独立を守るために城壁で島を囲い、自分たちで政治を行うために王を置かず共和政体を作り上げた。ラグーサ共和国だ。

 ラグーサ共和国はヨーロッパとアジアを結ぶ中継貿易で利益をあげた。そして上下水道を引き、学校や新聞社、薬局を整備して教育や福祉にも力を入れた。15~16世紀には最盛期を迎え、いまに見られる美しい街並みが完成した。

 「ヨーロッパの火薬庫」と呼ばれるバルカン半島にあって、ビザンツ帝国やオスマン帝国といった超大国が侵入を繰り返したが、城壁と巧みな外交戦略によって19世紀まで自治を守り抜いた。

 「世界中の黄金をもってしても自由は売らず」。街の要塞にはラグーサの誇りがこのように刻まれている。… 続きを読む

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長谷川 大

長谷川 大

世界遺産&旅行ライター

横浜国立大学卒業後、出版社勤務。三国志・戦国時代・幕末・ギリシア神話など、歴史ものを中心に編集・ライティングを行う。世界一周の旅を経てフリーの編集者・ライターとして活動中。これまでの訪問国数は68か国、世界遺産は182か所。All About「世界遺産」公式ガイド。http://allabout.co.jp/gm/gt/563/

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