世界遺産が世界遺産である理由(第16回)

「ユネスコ記憶遺産」とは何か?

2015.10.26 Mon連載バックナンバー

 世界遺産、無形文化遺産、ユネスコ記憶遺産をユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の三大遺産事業と呼ぶ。この中で特に分かりづらいのがユネスコ記憶遺産だ。

 そもそも記憶遺産とはいったいなんなのだろう? 記憶が遺産になるのだろうか?

 今回は2015年に登録された最新の記憶遺産の情報とともに、ユネスコ記憶遺産の概要と歴史を追ってみよう。

 

2015年新登録のユネスコ記憶遺産

 最初に、2015年10月上旬にUAEのアブダビで開催された第12回IAC(国際諮問委員会)の概要をお伝えしよう。

 ユネスコ記憶遺産については隔年でIAC(国際諮問委員会)が開催されており、ここで新しい物件の登録の可否が審議されている。今年は87件が推薦され、新たに47件の記憶遺産が誕生した。日本の物件は以下2件が登録された。

(1)東寺百合文書(とうじひゃくごうもんじょ)

 世界遺産に登録されている京都の東寺(教王護国寺)に伝わる約25,000点の文書で、信仰や教義・仏事や祈祷に関するものから寺院・荘園運営に関するものまで内容は多岐にわたる。日本の仏教史・寺院史上の貴重な資料であると同時に、こうした文書を桐箱の中に入れて保管・管理してきたこと自体が重要な文化活動といえる。

(2)舞鶴への生還 -1945~1956シベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録-

 第二次大戦後、舞鶴(京都府)は海外に残された660万人の日本人を受け入れる引揚港のひとつに指定され、1950年以降は唯一の引揚港として活動を続けた。登録されたのはシベリア抑留者の日記・手帳・葉書や引揚船の乗船者名簿など570点。たとえば白樺日誌には、抑留生活の記録と故郷を想う気持ちを込めた和歌や俳句約200首が記されている。

 日本が関係する物件として、中国が「大日本帝国軍の性奴隷『慰安婦』に関するアーカイブ」と「南京事件のドキュメント」を推薦していた。日本政府はこれらの構成資産である写真や記録の真実性・完全性が曖昧であることなどから中国に申請の取り下げや再検証を要求し、ユネスコに対しても政治利用であるとして不登録を求めていた。しかしながら… 続きを読む

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長谷川 大

長谷川 大

世界遺産&旅行ライター

横浜国立大学卒業後、出版社勤務。三国志・戦国時代・幕末・ギリシア神話など、歴史ものを中心に編集・ライティングを行う。世界一周の旅を経てフリーの編集者・ライターとして活動中。これまでの訪問国数は68か国、世界遺産は182か所。All About「世界遺産」公式ガイド。http://allabout.co.jp/gm/gt/563/

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