世界遺産が世界遺産である理由(第15回)

「無形文化遺産」とは何か?

2015.10.02 Fri連載バックナンバー

 和食和紙が登録されたことで話題になった無形文化遺産。世界遺産と同様、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が主導する保護活動なのだが、特に以下の3件はユネスコ三大遺産事業と呼ばれている。

(1)世界遺産 “World Heritage”
(2)無形文化遺産 “Intangible Cultural Heritage”
(3)ユネスコ記憶遺産 “Memory of the World”

 今回は無形文化遺産の歴史と概要をお伝えしたい。

 

なぜ無形文化遺産を保護しなければならないか?

 1972年に採択された世界遺産条約は、顕著な普遍的価値のある有形の不動産、たとえば遺跡や建物・自然などを守る活動だ。

 しかし、近年のグローバル化によって世界の画一化・西洋化が進んでおり、各地の特色ある文化は急速に姿を消しつつある。日本においてもここ数十年で生活は劇的に変化し、衣装や食事などの生活スタイルはもちろん、宗教観や人生観が多く変わったことを実感できるだろう。

 特に伝統芸能や祭礼・習慣のような人づてに伝えられる形のない文化は形ある文化財より短時間で失われる傾向がある。しかも伝承者がいなくなると修復することもできず、永遠に消滅してしまうことが少なくない。

 このような文化消失の危機に対してユネスコが1998年に採択したのが「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」だ。ユネスコは2001・2003・2005年の3回にわたって「人類の口承及び無形遺産の傑作」の宣言を行い、条約締結国の中の保護・継承すべきすばらしい無形文化遺産計90件を発表した。

 続いて2003年に「無形文化遺産の保護に関する条約(無形文化遺産保護条約)」を採択。この条約は30か国の批准で発効されるのだが、2006年1月にその数に到達し、4月20日に発効した。日本は2004年6月に3番目に批准している。

 そして2009年より、世界遺産リスト・危機遺産リストと同じような形で、代表リスト(人類の無形文化遺産の代表的な一覧表)と緊急保護リスト(緊急に保護する必要がある無形文化遺産の一覧表)の作成がはじまった。「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」の90件はここに吸収されている。

 

無形文化遺産とは何か?

 たとえば陶芸や舞踊のような職人技は人づてにしか伝えることができないものだ。こうした形のない文化遺産を無形文化遺産という。

 注意すべきは「物」ではないという点だ。… 続きを読む

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長谷川 大

長谷川 大

世界遺産&旅行ライター

横浜国立大学卒業後、出版社勤務。三国志・戦国時代・幕末・ギリシア神話など、歴史ものを中心に編集・ライティングを行う。世界一周の旅を経てフリーの編集者・ライターとして活動中。これまでの訪問国数は68か国、世界遺産は182か所。All About「世界遺産」公式ガイド。http://allabout.co.jp/gm/gt/563/

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