世界遺産が世界遺産である理由(第1回)

「世界遺産」の夜明けを導くふたつの遺跡

2014.01.10 Fri連載バックナンバー

 2013年、日本に17件目の世界遺産「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」が誕生した。2014年は「富岡製糸場と絹産業遺産群」、2015年は「明治日本の産業革命遺産」が、富士山に続いて世界遺産を目指すということで、ますます盛り上がりを見せている。

 しかし、そもそも世界遺産とは何なのか? 世界遺産になるといったいどんなメリットがあるのか? 本連載では、偉大な世界遺産の数々を眺めながら、背景に潜む壮大な物語を紹介する。

 第1回目は、世界遺産条約誕生のきっかけとなった、エジプトの「アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群」(以下、アブ・シンベル)と、インドネシアの「ボロブドゥール寺院遺跡群」(以下、ボロブドゥール)という2つの世界遺産にスポットを当てる。

 

エジプト文明を代表する古代遺跡アブ・シンベル

アブ・シンベル。左が大神殿、右が小神殿(ハトホル神殿)で、いずれも
紀元前13世紀の建設。小神殿は第1王妃ネフェルタリに贈られたもので、
正面には夫妻の立像が並んでいる。

 古代エジプトの人々は、水のない砂漠で川やオアシスに張り付いて生きてきた。しかし川は時に洪水をもたらし、オアシスは気まぐれに消え去った。そのため砂漠の国家はより広い土地を欲し、他国の侵略に対するために強くあらねばならなかった。

 一方で砂漠は、見通しがよく遮るものがないため交通の便がよく、人が盛んに行き来した。そして各地の文化が集積し、やがて文明へと発展した。四大文明はいずれも砂漠で誕生している。

 紀元前3000年頃、メネス王がナイル川流域を統一し、古代エジプトの時代が幕を開ける。王はファラオと呼ばれ、神の権威をもって国を統治した。

 そして紀元前13世紀、第19王朝ファラオ・ラムセス2世は、自らの権勢を誇示する神殿を各地に建設した。その最高傑作がアブ・シンベルだ。

 アブ・シンベルはおびただしい数の神像やレリーフで埋め尽くされているが、その多くがラムセス2世に関するもの。たとえば大神殿の正面に置かれた4体の座像や内部に立ち並ぶ立像は太陽神ラーと化したラムセス2世を象ったもので、壁面のレリーフには敵国ヒッタイトを打ち破る姿が勇ましく描き出されている。

 「我は太陽神ラーである」。ラムセス2世はアブ・シンベルによって自らが神であることを高らかに宣言した。… 続きを読む

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長谷川 大

長谷川 大

世界遺産&旅行ライター

横浜国立大学卒業後、出版社勤務。三国志・戦国時代・幕末・ギリシア神話など、歴史ものを中心に編集・ライティングを行う。世界一周の旅を経てフリーの編集者・ライターとして活動中。これまでの訪問国数は68か国、世界遺産は182か所。All About「世界遺産」公式ガイド。http://allabout.co.jp/gm/gt/563/

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