「面白い」には理由がある!大ヒット漫画を分析(第7回)

「等価交換」の魔法使い~『鋼の錬金術師』の冒険譚

2014.03.26 Wed連載バックナンバー

 「鋼の錬金術師」とは少しイカつい感じのするタイトルだが、敢えてクラシックな香りをまとわせるとともに、「錬金術」に対する新しいアイデアを込めている。「無から有は作り出せない」という「等価交換」の原則は、「魔法」または「超能力」の新しい解釈であり、物語を通じて流れている思想であり、少年漫画として語りかけるテーマにもなっていた。

 

世界観とストーリー

 これまで超能力や魔法を扱ったファンタジーは、本人の体力や精神力などによる上限を設けていたものの、何でも生み出せる夢のような力として描かれることが多かった。だがこの作品は「無から有は作り出せない」という「等価交換」の原則を置いた。これは夢の世界に歯止めをかけたようにも見えるが、「在る物の形を変える」という考えで超能力に現実感をもたせる、逆転の発想だった。

 ストーリーは主人公であるエルリック兄弟が、死んだ母親を蘇らせる「人体錬成」という禁忌を犯したことに端を発する。この行為で母親の錬成に失敗しただけでなく、「真理の扉」を開けた代償として兄エドワード(エド)は左足を、弟アルフォンス(アル)は全てを「持っていかれて」しまう。エドはアルの魂を取り戻すためさらに右腕を失い、アルは鎧を依り代に魂だけが辛うじて現世に留まる存在となってしまう。この苦難から幼なじみロックベルや機械鎧(オートメイル)などの助けを借りて這い上がったエドは、「国家錬金術師」の資格を取り、弟アルとともに奪われた肉体を取り戻す探求の旅に出ることになる。実に壮烈な主人公のバックボーンである。

 そして肉体を取り戻すための鍵である「賢者の石」が軍上層部の暗黒の野望と密接に関係しており、兄弟がこの巨悪と対峙する展開へとつながる。物語の前史であり伏線でもあるイシュヴァールの内戦、傷の男(スカー)、「七つの大罪」を名に持った人造人間たち、東の国の人間と錬丹術などがそこに絡み、数ある支流を本流へと収束させながら、兄弟の父親であるヴァン・ホーエンハイムの衝撃の過去とホムンクルスの正体を描いてもう一段深く物語を掘り下げたのち、壮大なクライマックスへと向かう。

 

同人誌的センスと王道的センス

 緻密に積み上げられたストーリーの上で、実にイキイキと活躍しているのが、主人公を始めとする数々の登場人物たちだ。彼らに対する作者の並々ならぬ思い入れが、この作品の最大の特長である。… 続きを読む

全文(続き)を読む

続きを読むにはログインが必要です。

まだ会員でない方は、会員登録(無料)いただくと、続きが読めます。

酒式/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

酒式/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

脱サラして漫画家を志し、週刊少年サンデーで漫画デビュー。その後さまざまに名前を変えて作品を出しながら、漫画の世界にしがみつく。日本酒党。

このページの先頭へ
Bizコンパス公式Facebook Bizコンパス公式Twitter