「面白い」には理由がある!大ヒット漫画を分析(第6回)

『DEATH NOTE』は天誅か~死の駆け引き

2014.03.13 Thu連載バックナンバー

 「ノートに名前を書かれた人間は死ぬ」~この単純明快な入口から、ほどなく物語は複雑怪奇な頭脳戦へ突入していく。「デスノート」を巧みに使い、「キラ」として粛清を続ける夜神月(ライト)を、卓越した分析力と推理力を持つL(エル)が追う、というのが『デスノート』のメインテーマである。

 

「兵器」としてのデスノート

 登場人物のひとりであるニアがデスノートを「史上最悪の殺人兵器」と表現したのは言い得て妙である。死神が扱うものであるにもかかわらず、「呪い」などといったオカルト臭は稀薄で、キッチリ決められた「ルール」に従って、「書かれた人間が死ぬ」という効力を発揮する。そこに曖昧さはない。デスノートの明快さは、「兵器」と呼んだ方がしっくりくる。

 デスノートを使った物語には、殺意や怨念、人を殺めることの「業」を、つまりはノートを使う人間の心理・葛藤をテーマにする方向性もあったと思う。たとえば「ドラえもん」(藤子・F・不二雄)の「どくさい(独裁)スイッチ」のエピソード。短絡的に気に入らない人間を次から次へと消していったのび太は、その結果に慄然とするという、寓話的な内容だ。「デスノート」も当初は主人公・夜神月の葛藤が描かれるが、すぐに「僕ならできる。世の中を変えて、新世界の神となる」と決意を示し、Lが登場してからは完全にLへの対抗心で動き始める。物語はデスノートという「兵器」を介して差し向かった二人の頭脳戦へと突き進んでいく。大場氏は「デスノート」というアイデアから、二人の天才の「対決」を選択したのだった。少年ジャンプにおけるこの選択は実に賢明だったといえる。

 この「頭脳対決」は、長いスパンで伏線を張り、推理や作戦の正当性を叙述しながら進められるのだが、勝負が複雑さを増していくにつれ、彼らの言い分を完全に検証しながら読み進めていくことは読者にとって困難な作業になってくる。セリフ回しも非常に長いこの独特な作品がなぜ多くの読者の支持を得られたかといえば、やはりデスノートの原点、「名前を書かれた人間は死ぬ」という明快さが入口にあり、「対決」の構図があったからだろう。

 そしてもう一つのヒット要因は、業界最高峰ともいえる小畑健氏の絵である。

 小畑氏は「土方茂」の名で、高校生のときに手塚賞準入選を果たしてデビューした(1985年)。当時まだ健在だった審査委員長の手塚治虫氏が、… 続きを読む

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酒式/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

酒式/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

脱サラして漫画家を志し、週刊少年サンデーで漫画デビュー。その後さまざまに名前を変えて作品を出しながら、漫画の世界にしがみつく。日本酒党。

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