「面白い」には理由がある!大ヒット漫画を分析(第10回)

孤独のグルメ~男が食べるだけの漫画がなぜウケる?

2015.01.31 Sat連載バックナンバー

 サラリーマンがお昼どき、ランチを求めてオフィスの外へ出る姿は見慣れた日常の光景だ。勝手知ったるいつもの店に通うのもいいが、未踏の地に踏み込み、普段は眠っている観察眼を発動することで、新たな発見がある。いわば冒険だ。

 この物語の主人公である背広姿の中年の昼飯事情は、その意味で日々冒険だった。

 

オジサンが食事するだけのマンガがなぜ受ける?

 今回紹介する「孤独のグルメ」は、今から20年以上前の1994年に刊行されたマンガだ。もともとカルト的な人気があったが、2012年にテレビドラマ化されると人気に火がつき、2013年には優れたドラマを表彰する「東京ドラマアウォード」の優秀賞を受賞。主演の松重豊は、50歳を越えながらもドラマやバラエティにひっぱりだこの人気俳優となった。そして夏には18年ぶりにマンガの新刊(第2巻)が出版されることになった。

 そんな人気作品ではあるが、基本ストーリーは背広姿の男がただただ外食するだけ。内容は極めて地味だ。主人公である井之頭五郎は雑貨輸入商を営む「決まった職場のない」個人事業主。オフィスを持たないため、各地をわたり歩く。馴染みの店などはなく、毎食が“冒険”となるため、自然と飲食店に観察眼を働かせ、探求心を持つ、という設定だ。

 タイトルに「孤独」とあるように、味の感想を家族や友人に話すわけでもなく、すべてが自己完結。だからことさら褒める必要もないし、貶す必要もない。また「グルメ」とはいっても、「くそっ。それにしても腹減ったなあ。“めし屋”は……どこでもいい、“めし屋”はないのか」という正直なセリフが示すように、いわゆる美食家とは違う。

 名物や評判の店をこれと決めて目指すのではなく、その場その時の気分と胃袋の要求、そして経験から当たりをつけ、探す。そしてやっとありつけた食事を目の前にして、「素朴だなァ…屋台の焼きそばともまた全然違うんだけど…これはこれで」、「あぁ…白い飯。ここに白い飯とお新香のひとつもあれば…」という細かいこだわりを見せる。このこだわりこそが、本作品における“グルメ”の立脚点である。

 

クールな絵柄と細かい描写が面白さを生む

 本作は原作が久住昌之、作画が谷口ジローという分業体制となっているが、久住はデビュー以来ずっと、食に対してマニアックでねちっこい視点に執着している作家だ。… 続きを読む

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酒式/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

酒式/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

脱サラして漫画家を志し、週刊少年サンデーで漫画デビュー。その後さまざまに名前を変えて作品を出しながら、漫画の世界にしがみつく。日本酒党。

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